Western Digital(ウェスタンデジタル)は、日立グローバルストレージテクノロジーズ(日立GST)を買収する契約に合意した。2011年3月7日に発表した。買収後の新会社は、長年にわたり業界の巨人として君臨してきたSeagate Technology(シーゲイト・テクノロジー)を追い越して、世界最大のハードディスク装置メーカーとしての座を獲得することになる。
Western Digital(ウェスタンデジタル)は、日立グローバルストレージテクノロジーズ(日立GST)を買収する契約に合意した。2011年3月7日に発表した。買収後の新会社は、長年にわたり業界の巨人として君臨してきたSeagate Technology(シーゲイト・テクノロジー)を追い越して、世界最大のハードディスク装置メーカーとしての座を獲得することになる。
今回の買収によって今後、ハードディスク装置業界全体が緩やかな統合に向かう大きな動きが始まるだろう。同業界は長い間、主要な顧客であるPCメーカー各社からコスト低減の圧力を受けてきた。PCメーカー自体が、厳しいコスト低減圧力にさらされている。またハードディスク装置メーカーは、フラッシュメモリ・メーカーからの高まる脅威にも直面している。
合併後の新会社は、ハードディスク装置市場において約50%のシェアを獲得し、支配的な地位を確立することになる。一方、ライバル企業のシーゲイト・テクノロジーのシェアは、30%を下回る程度にとどまる。ハードディスク装置メーカー各社は現在、コンピュータ業界において生き残るための影響力を確保する動きを加速させている。同業界は、長年にわたり利幅が薄く、現在ではハードディスク装置をベースとしたPCからの転換が進んでいる状況にある。
調査会社である米国のHIS iSuppliの最新リポートによると、2011年第1四半期におけるハードディスク装置の世界出荷数量は、1億6090万個になる見込みだという。2010年第4四半期は1億6750万個だったことから、前期比で約4%減少することになる。
ウェスタンデジタルは、過去1年間で約95億米ドルの売上高を上げた。しかしその利益率は、直近の四半期で売上高のわずか9%を上回る程度だという。また、同社は2010年に、約2億万個のハードディスク装置を出荷したが、その平均販売価格(ASP)は約46米ドルまで下落していた。
一方、シーゲイト・テクノロジーの過去1年間における売上高は約110億米ドルで、利益率は直近の四半期で売上高の5%に落ち込んだ。同社もウェスタンデジタルと同様に、2010年に約2億万個のハードディスク装置を出荷したが、平均販売価格はウェスタンデジタルを上回る約55米ドルだった。
別の市場調査会社である米国のInternational Data Corporation(IDC)でハードディスク担当リサーチディレクターを務めるJohn Rydning氏は、「今回の合併は、ハードディスク装置のサプライチェーン全体にわたって、多くのプレーヤー企業に良い影響を及ぼすだろう」と述べている。
さらに同氏は、「ウェスタンデジタルはこれまで、エンタープライズ向けハードディスク装置市場において比較的弱かったが、今回の日立GSTの買収により、同市場で第2位のサプライヤーとしての地位を即座に確保することが可能だ。サーバ向けハードディスク装置の需要は高く、ハードディスク装置市場全体と比べても成長率が高い」と述べている。
また同氏は、「今後しばらくの間は、シーゲイト・テクノロジーや東芝、サムスン電子は、(ウェスタンデジタルと日立GSTが買収によって手放すことになる)再分配された市場シェアを獲得できるだろう。このため今回の買収は、これらのメーカーにとってもメリットがある」と付け加えた。
日立GSTは、日立製作所の100%子会社だ。ウェスタンデジタルは今回、日立GSTの買収にあたり、35億米ドルの現金と、ウェスタンデジタルの普通株2500万株を支払う。ウェスタンデジタル株式の2011年3月4日の終値は30.01米ドルだったので、2500万株は7億5000万米ドルに相当する。従って、現金と合わせると買収総額は約43億米ドルになる計算だ。ウェスタンデジタルは、保有している現金資産と、約25億米ドルの借入金などを合わせて買収資金を用意する予定だという。
日立製作所は、ウェスタンデジタルの発行済み株式の約10%を保有し、日立製作所からは2名がウェスタンデジタルの取締役に就任する。今回の取引は、すでに両社の取締役会からの承認を得ており、規制機関による承認を待って2011年第3四半期中に完了する見込みだ。
ウェスタンデジタルは今回の買収によって、買収関連費用や事業再構築に向けた費用などを除き、Non-GAAP EPS(一般会計原則に準拠しない1株当たりの利益)が直ちに増加すると期待している。
合併後の新会社は、ウェスタンデジタルの社名を引き継ぎ、本社も変わらず米国カリフォルニア州のアーバイン市に置く。CEO(最高経営責任者)には現CEOのJohn Coyne氏が続投し、COO(最高執行責任者)にはTim Leyden氏が、CFO(最高財務責任者)にはWolfgang Nickl氏がそれぞれ就任する。また、日立GSTの社長兼CEOであるSteve Milligan氏は、ウェスタンデジタルの社長に就任し、CEOのJohn Coyne氏の直属となる予定だ。
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