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はちゅねミクがネギを振り目を光らせる、操るはルネサスの「Smart Analog」ET2011 アナログ設計(1/2 ページ)

ルネサスが10月に発表したアナログICの新たな製品群は、「マイコン技術者でもアナログ設計を可能にする」というコンセプトを掲げる。ET2011では、このコンセプトを来場者が体感できるデモを実施した。「はちゅねミク」を全面に押し出したデモで、新製品群への興味と相まってか、多くの来場者が足を止めていた。

» 2011年11月18日 18時15分 公開
[薩川格広, 朴尚洙,EE Times Japan]

 2011年11月16〜18日の日程でパシフィコ横浜で開催された「Embedded Technology 2011/組込み総合技術展(ET2011)」。国内半導体最大手メーカーのルネサス エレクトロニクスのブースで、ひときわ大きな人だかりができていたのが「Smart Analog」のコーナーだ。

 Smart Analogとは、同社が2011年10月に発表したアナログICの新たな製品群で、「マイコン技術者でもアナログ設計を可能にする」というコンセプトに基づく。同社はこの製品群の第1弾として、マイコンと組み合わせて使うアナログフロントエンド部を1チップ化した「Smart Analog IC」を10月に発表するとともに、Smart Analog ICに同社のマイコンコア「RL78」を併せて集積した「Smart Analog MCU」も11月16日に発表している(EDN Japanの関連記事)。いずれも、設定レジスタの値を外部のマイコンや内蔵のマイコンコアから書き換えることで、アナログフロントエンド部の回路構成や特性をユーザーが手元で変更できることが特徴だ。PC上のグラフィカルな環境でこの設定を進められる専用GUIツールも提供する。

 これらの発表後初の展示会となる今回、ルネサスは来場者がSmart Analogのコンセプトを体験できるデモを用意した。「はちゅねミク*1)」の人形を操るセンサーシステムのアナログ信号処理回路にSmart Analogを適用したデモである(図1)。人だかりの先にあるのはこのデモだ。

*1)「はちゅねミク」は、歌声合成ソフトウェアのキャラクター「初音ミク」をデフォルメした派生キャラクター。

図1 図1 ネギを振り、目を光らせる「はちゅねミク」のデモ ジャイロセンサーで検出した角速度に応じて腕に持ったネギを振り、圧力センサーで読み取った圧力に応じて目のLEDの発光色を変化させる。(クリックで拡大)

 このはちゅねミクは、腕の部分にモーターが組み込まれており、ジャイロセンサーで検出した角速度に合わせて手に持ったネギを振る。さらに、目の部分にLEDが内蔵されており、圧力センサーで読み取った圧力に応じて発光色を変化させる。いずれもセンサーの出力信号をアナログフロントエンドで処理してデジタルデータに変換してからマイコンに供給し、マイコンのソフトウェアがモーターやLEDを制御する仕組みだ。

図2 図2 体験デモの手順 3分程度でSmart Analog ICを使ったセンサー用アナログフロントエンドの設計を体験できる。(クリックで拡大)

 今回のデモでは、来場者はいずれかのセンサーを選択し、そのセンサーに合わせたアナログフロントエンドの設計を体験する(図2)。まずSmart Analog ICが実装されたボードに、選んだセンサーボードをつなぐ。このSmart Analog ICボードはUSB経由でPCに接続されており、そのPC上には設定用GUIがインストールされている。来場者はそのGUIを立ち上げて、ルネサスがあらかじめ用意しておいた設計ガイドに沿って、マウス操作でGUI上の設定項目を切り替えたり数値を選んだりしていく。全て終わったら、GUI上のボタンをクリックして設定情報をSmart Analog ICボードに転送する。これでSmart Analog ICの内部レジスタが書き換えられ、選んだセンサーに対応するアナログフロントエンドが構成できた。

 一連の作業に要する時間は3分程度と短い。例えばジャイロセンサーを選んだ場合、ここまで作業を終えて来場者がボードを振ると、その動きに同期してはちゅねミクがネギを振る。

ほとんどのセンサー信号処理に対応可能

 Smart Analog ICとSmart Analog MCUには、いずれも次のようなアナログ回路要素が集積されている。

 中核を担うのはオペアンプを使った増幅器で、複数個を内蔵する。反転入力端子と非反転入力端子、出力端子の間の結線や、各端子につながる抵抗器の値や接続/遮断などを切り替えられる上に、増幅器と増幅器の間の結線も変更が可能だ。それにより、反転増幅や非反転増幅の他、減算や加算といったアナログ演算を実行したり、計装アンプやI/Vアンプを構成したりできる。D-A変換器も搭載しており、その出力のアナログ電圧をこれら増幅器に加えるバイアスとして使えば、増幅器の動作点や利得、オフセットを調整することが可能だ。さらに、遮断周波数を調整可能な高域通過型と低域通過型のフィルタも内蔵する。その他、LDOレギュレータや温度センサーも集積した。

 ルネサスによれば、これらの回路要素の構成や特性を変更することで、ほとんどのセンサー回路に対応できるという。「Smart Analogは、アナログ回路設計の経験が無いマイコン技術者でも、迷うことなくセンサー回路に関する幅広い基礎技術を理解し、経験できる製品だ」(同社)。

さらに高度なWeb設計ツールも開発中

 今回のデモでも見せていた通り、PCの専用GUI上で設定したパラメータは、その場でUSB経由でSmart Analogのチップに書き込んで動作を確認できる(図3)。

図3 図3 パラメータ設定用GUIの画面例 ほとんどの設定はマウスだけで操作できる。例えば、増幅器の構成を変更するには、アナログマルチプレクサの経路やアナログスイッチのオン/オフを切り替えて、オペアンプの端子間の結線を変更するといった具合だ。(クリックで拡大)

 マイコンコアを統合した品種であるSmart Analog MCUでは、マイコンブロック側に周辺回路として用意されたA-D変換器でアナログフロントエンド部のアナログ信号を取り込んでデジタルデータに変換し、そのデータをUSB経由でPCで読み取ってGUI上でアナログ波形として表示することも可能だ。オシロスコープを使わなくても、Smart Analogのチップを実装した評価ボードとPCがあれば、アナログフロントエンドの設計を進められる。ただし、必要に応じてオシロスコープでSmart Analogチップ内部の実際の信号を観測できるように、アナログフロントエンド部の一部のノードについては外部端子にも引き出した。

 さらにルネサスは、ユーザーが同社のWebサイトにアクセスして利用するWebアプリケーション形式の設計支援ツールも用意しているという。米国の大手アナログ半導体ベンダーが提供しているWeb設計支援ツールと同様のコンセプトに基づくものだと説明する。さまざまな種類のセンサーに対応するSmart Analogの設定パラメータをあらかじめルネサスが準備しておき、ユーザーがセンサーの種類や製造メーカー、品番を選択すると、それに応じたパラメータが提示されるといった機能が盛り込まれることになりそうだ。「2011年度中には提供できるようにしたい」(同社)という。

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