アナログ半導体の最大手メーカーであるTIは、2011年に同業のNational Semiconductor(日本での通称ナショセミ)を買収した。一般に同業他社の買収では、製品ラインの統廃合が取り沙汰される。これについてTIは、そうした考えがないことをあらためて表明した。
Texas Instruments(TI)は2012年5月25日に東京都内で報道機関を対象にアナログ半導体事業の説明会を開催し、2011年9月に買収を完了したアナログ半導体メーカーNational Semiconductorが手掛けていた製品ラインについて「廃止することはない」とあらためて表明した。
説明に当たったのは、TIでアナログ事業統括を務めるシニア・バイス・プレジデントのGregg Lowe(グレッグ・ロウ)氏である。「当社は買収以前にNational Semiconductorの製品ラインを詳細に検討し、両社の製品ラインが補完的な関係にあることを確認していた。実際に重複はわずか5%にとどまっており、それゆえに旧National Semiconductorの製品ラインを一切廃止しないとユーザーに強く約束できるのだ」(同氏)。
TIは現在、アナログ事業部門の傘下にある4つの事業体の1つとして旧National Semiconductorの事業を運営しており、社内ではその事業体を旧National Semiconductorの本社所在地だったシリコンバレーにちなんで「Silicon Valley Analog(略称SVA)」と呼んでいる。このSVAは、TIが旧来から手掛けていた3つの事業体である「高性能アナログ(High Performance Analog)」と「高耐圧アナログ/ロジック(High Voltage Analog/Logic)」、「電源管理(Power Management)」からは独立した組織として運営しているという。ただし、企業ブランドについては「Texas Instruments」に統合しており、「National Semiconductor」はブランド名やパッケージのロゴとしても存続しないことになる。
一方で、National Semiconductor時代にユーザーからの評価が高かったWeb設計支援ツール「WEBENCH」については、名称もそのまま引き継いでおり、今後は「SVA以外の製品も含めて、TIの全てのアナログ半導体をこのツール上で扱えるようにする」(同氏)という方針だ。既にSVA以外の3つの事業体が手掛ける製品についてもモデルの提供を始めており、特に高性能アナログと電源管理の製品については、「毎週、モデルを追加している」という。National Semiconductor時代のWEBENCHは、同社の製品しか扱えなかった(参考記事 「分厚いデータシートに別れを告げよう」、センサー用アナログ設計をナショセミが簡略化)。
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