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「退任よりも再建計画の実行が自分の責任」、いまルネサス社長が掲げる4つのプラン(後編)ビジネスニュース インタビュー(1/2 ページ)

東日本大震災やタイの大洪水など、想定外の自然災害に見舞われる中、事業再建を進めてきたルネサス。代表取締役社長の赤尾泰氏は、“半導体サプライヤとしての責任の重さ”を痛感したという。

» 2012年09月05日 12時38分 公開
[Junko Yoshida,EE Times]

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ROIが低いSoC事業の整理

 ルネサス エレクトロニクスの代表取締役社長を務める赤尾泰氏は、「SoC(System on Chip)事業をコア事業とは見なさない。高いROI(投資利益率)を得られない事業を継続するつもりはない」と明言した。「SoC事業は膨大な研究開発が必要でありながら、収益に対する長期的な効果が極めて低いという点で、マイコンやパワー半導体とは異なっている。このため今後、デジタルオーディオやデジタルビデオなどのホームマルチメディア向けSoC事業を廃止する予定だ」(赤尾氏)。

 一方、社会インフラ向けSoC事業は、製品寿命が長いので、今後も継続する予定だ。

 赤尾氏は、ルネサスのSoC事業をスピンオフしてルネサス モバイルと統合する可能性については、「まだ未定だ」と述べた。同氏は、「ルネサス モバイルの事業は非常に高い潜在能力を秘めているため、十分に時間をかければ自立していけると確信している。ただし、状況に応じて柔軟な決断を下す必要があると考えている」と続けた。

 さらに同氏は、ルネサス工場の売却や生産能力の縮小に関して、今後3年間で計画の全てを完了させる予定であることを明らかにした。一部の工場については、今後12カ月以内に売却を行う可能性もあるという。

 「ルネサスが今後、マイコンやアナログ/パワー半導体事業に注力していくという方針は、Infineon Technologiesの事業戦略に非常に似ている」と指摘したところ、赤尾氏は、「偶然同じになってしまっただけのことで、製品のターゲット市場が類似しているわけではない。ルネサスのマイコン事業にとって、車載分野が引き続き最も重要な市場であることに変わりはないが、いわゆるスマート社会の実現に貢献することも目指していく」と語った。「マイコンやアナログ/パワー半導体は、ファクトリーオートメーションやスマートグリッド、スマートビルディングなど、社会インフラにおけるあらゆるシステムをサポートする上で不可欠なものとなる。発展途上国は、有線通信網を構築した後、無線インフラの導入を進めた。同じように、スマート社会の実現にも積極的に取り組むと確信している。おそらく、20年以内には着手するだろう」(赤尾氏)。

2010年当初の展望を振り返る

 赤尾氏は、旧ルネサス テクノロジと旧NECエレクトロニクスが合併した当初に描いていたさまざまな展望を振り返った。同氏は、「合併当時の売上高比率は、日本国内が50%、海外が50%だった。われわれは、日本の国内市場は、急激に成長することはないが、急激に縮小することもないと考えていた。この予測を前提に、中国やインド、ブラジルに狙いを定めて海外市場の迅速な拡大を目指そうとした」と述べる。赤尾氏は、ルネサス エレクトロニクスの設立後100日以内に新会社の方針を具体化する「100日プロジェクト」で、売上高を7%増加することを目標として掲げた。さらに、スマート社会の実現に不可欠なチップ/部品を新興市場で販売する計画も立てていたという。

 ところが、旧ルネサス テクノロジと旧NECエレクトロニクスの統合完了を目前にした2011年3月11日に東日本大震災が発生、ルネサスは甚大な被害を受けた。どの企業の社長も、このような災害を想定することはできなかっただろう。しかし赤尾氏は、この困難の中で会社をまとめ上げ、海外顧客からの信頼を維持するとともに、有事の際でも製造ラインを確保できるようにする「ファブネットワーク」の構築に着手した(関連記事)。

 2011年にはこの他にも、さらなる想定外の事態が起こった。2008年の世界経済危機の後、わずかながら回復傾向をみせていた日本国内の民生機器市場が、急激に減速したのだ。

 赤尾氏は、2011年8月までにルネサスの構造改革を加速させるという計画を発表した。具体的には、SoC事業を縮小することや、自社で製造するチップの比率を削減するというものだ。ルネサスはこの時も、こうした再建計画を自己資金で賄えるという希望を抱いていたという。

 さらに2011年末には、タイで大洪水が発生し、HDD産業が多大な被害を受けた。ルネサスは半導体売上高が激減し、ついにとどめを刺される。その上、欧州の金融危機による影響が中国経済にも及び始めた。

 2011年度(2012年3月期)におけるルネサスの売上高は、前年度比23%減となる7860億円に落ち込んだ。ルネサスによると、減少した売上高のうち550億円は、東日本大震災の影響によるものだという。2010年度は営業利益が145億円だったが、2011年度は営業損失が568億円に上った。また、2011年度の純損失は626億円となった。

photo ルネサスの決算
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