中国は、規模、創造性、影響力において、米国の大手半導体メーカーTexas Instruments(TI)に匹敵する企業を生み出すことができるだろうか。これまでのところ、その気配はなかった。中国の半導体企業の現状を考えれば、今後もその可能性は低いと思われる。
EE Times誌の中国版であるEE Times-Chinaは2012年9月7日、中国のファブレス半導体企業のCEO(最高経営責任者)、EDAベンダーやファウンドリの経営陣、清華大学の教授を招いて、半導体業界会議「China Fabless CEO Forum & Awards」を開催した。同イベントに参加したCEOらは、「Texas Instruments(TI)に匹敵する企業が中国から生まれるか」という議題について話し合う中で、「それには、まだ長い年月がかかりそうだ」と意外にも素直に認めた。
近年、エレクトロニクス業界における中国の役割は、“製造”から“設計”へと急速に変わりつつある。EE Times-Chinaは毎年、中国のファブレス半導体企業に関する調査を実施しているが、その最新結果によると、中国本土の地元ファブレス半導体企業が製造した45nm世代以降のデジタルICの生産量は、2011年から33.3%も増加している。
EE Times-Chinaが開催した半導体業界会議では、中国の半導体企業の経営陣にいつものような威勢の良さは見られなかった。彼らは自己分析を行い、中国の半導体企業がいまだにTIのようになれない理由を7つ挙げている。
1. 生存競争におけるプレッシャーが大き過ぎる
Dioo Microcircuitsでプレジデント兼CEOを務めるJeff Ju氏は、「中国の地元のファブレス半導体企業は、非常に大きなプレッシャーの中で生き残ろうとしている。独自のIP(Intellectual Property)を持たない彼らは、ゼロから研究開発を始めているが、現時点では、TIのような巨大企業に追い付くすべなど知っているわけがないだろう。彼らは日々の業務に追われ、ファウンダリから提供される技術やIPすら理解できてないことがある」と述べた。
2. 複数の製品ラインアップをそろえていない
製品のラインアップを複数とりそろえている中国のファブレス企業は少ない。こうした半導体企業の多くは1つの分野の製品しか提供できないため、“今、最も熱い市場”を見極めることで精一杯だ。これとは対照的に、TIは、さまざまな製品ラインアップを用意し、アナログや組み込み(マイコン)、ワイヤレスなど、幅広い分野の製品を手掛けて利益を生み出している。
3. 成長する方法を知らない
清華大学のShaojun Wei教授は、「国際的な企業の多くは、合併と買収を繰り返すことで、さらなる成長を遂げている。だが、中国のファブレス半導体企業はこれまでのところ、こうした戦略を実施できていない。中国のファブレス企業の初代CEOたちは、彼らが創設した会社に愛着を持ち過ぎている。彼らは、自分の会社が他の企業と合併するのを見るのがつらいのだ。これが、中国のファブレス企業が抱える大きな問題だ」と指摘した。
4. 心を開いて話し合おうとしない
X'ian Semipower Electronic TechnologyのCEOを務めるLuo Yi氏は、「合併の基本は、他の企業と合意することにある。だが、一般的に中国企業の経営陣は、互いに有益な取り引きの可能性を探ることについて、心を開いて他の企業とコミュニケーションを取ろうとしない。華為技術(Huawei)以外に、この問題を克服できる中国のファブレス企業があるとは思えない」と話した。
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