SynopsysによるAnsys買収がようやく完了した。このM&Aにより、Synopsysのソリューションにはどのような変化が起こるのか。
Synopsysは2025年7月17日(米国時間)に、350億米ドルでAnsysを買収する手続きが完了したと発表した。Synopsysは、この取引の完了に必要な承認を得るために18カ月間に及ぶ苦難を乗り越えてきたことから、経営陣は大きく安堵している。
SynopsysのCEOであるSassine Ghazi氏は、さまざまな報道機関によるインタビューで、米中貿易摩擦の緊張による課題を克服したことの他、同社の位置付けについて説明するために8回以上中国を訪問して政府高官と会談し、ほぼ駐中国大使のような役割を担うことになった経緯などについて語った。
それは、このところ半導体業界のCEOが、両国の関係を円滑化するために担ってきた役割だ。例えばNVIDIAのJensen Huang氏は2025年4月、同社のGPU「H20」に輸出規制が課されたことを受け、中国を訪問している(これは最終的に販売が再開されることになった)
報道によるとGhazi氏は「米中両国の交渉において難航した点は、独占禁止法に関する問題ではなく、むしろ両国間で何か問題が発生した場合に、技術へのアクセスがどうなるのかを理解することだった」と述べているという。また同氏は、Fortune誌の取材に対し、「役に立ったのは、顧客からの圧倒的な支持と、中国規制当局の間で、『過度な難しさや制約の多さは中国にとって良くない』という認識が広がったことだった」と語った。
Ghazi氏は、2025年7月の正式発表において「本日はSynopsysにとって、変革をもたらすマイルストーンとなった。インテリジェントシステム開発がますます複雑化するに伴い、エレクトロニクスと物理学をより深く統合し、AIによって強化された設計ソリューションが求められている。今や、Ansysの最新システムシミュレーションと解析ソリューションがSynopsysの一部になったことで、エンジニアリングチームの能力を幅広く最大化し、シリコンからシステムまでイノベーションを引き起こすことが可能だ」と述べている。
米国EE Timesは、今回のニュースについて詳細を理解するため、米国カリフォルニア州マウンテンビューのSynopsys本社で、最高製品開発責任者(Chief Product Development Officer)であるShankar Krishnamoorthy氏に話を聞いた。同氏は「われわれは今回の買収について非常に興奮している。数々の紆余曲折に満ちた長い旅路だったため、大いに安堵しているところだ」と述べる。
SynopsysとAnsysが最初にパートナー提携を正式発表したのは、2017年6月のことだった。この時、両社は「Ansysのパワーインテグリティおよび信頼性サインオフ技術と、Synopsysの物理的な実装ソリューションを密接に統合し、インデザインで利用できるようにする予定だ」と述べていた。
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