今度は国内に目を向けよう。
インターネットと連動して自己学習をするAIは、実は日本にもいくつか存在する。既に実用化に近いレベルまで到達しているものもあるほどだ。その1つが、東京工業大学の長谷川修准教授が研究を進めるAI「SOINN」である。
SOINNは、“Self-Organizing Incremental Neural Network”の略で、自己増殖型ニューラルネットワークと呼ばれる。同研究所のWebサイトには、「『自分で考えて、行動する』ための、脳をヒントにして考案された学習器」と説明されている。要は、「機械学習」をするAIである。
記事によれば、SOINNはインターネット上の画像を見て、物体の特徴を自ら判別し、「この物体は○○である」と学習していくそうだ。例えば、インターネットで公開されている無数の人力車の画像から、車輪や車体などの共通項を探し出し、最終的に「“人力車”とはこういうもの。こういう特徴があれば“人力車”というもの」といったように、AIが自分で学習し、知識を蓄えていく。YouTubeに動画がアップされているので、興味がある方は見てみるといい。「まるで日本版スカイネットだ」というコメントがいくつか見られるのが興味深い。
既にGoogleなどで画像検索サービスは提供されているが、「機械学習」を加えることで飛躍的に検索機能が向上するため、似たような研究開発が他にも行われている。近くSOINNと似たようなAIが登場するかもしれない。
海外に目を戻すと、スペインでは「人間になりすますAI」の開発を行っている。SNS上で14歳の少女のふりをするAI「Negobot」だ。
相手との会話内容に合わせて、幼い言葉遣いから、少し大人びた話し方までできるようだ。会話の内容を記憶して、次の会話でその話題を持ち出すこともできる。
スペイン警察は、「ネット上の性犯罪者を見つけられるかもしれない」と、このNegobotoに関心を寄せているそうだ。
個人的にではあるが、こういう取り組みは日本の警察では行わないのだろうか? Bot相手に話をしていれば(Botとは気づかずに)、潜在的な犯罪者を見つけたり、実犯罪に走るのを防いだりすることができるかもしれない。
いくつか例を挙げたが、このように、完全な“自我”とまではいかないものの、自我に近いものを持つAIの開発が進んでいる。「自我を持つ」というのが、AIの未来像なのかもしれない。第1回で筆者個人が考えるAIの最大のポイントは、「単独で考えることができる」「意志を持つことができる」「感情を持つことができる」と書いたので、“自我”を持つということはこの第一歩かもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.