低温動作で高出力発電、日立が次世代燃料電池技術を開発:自家発電装置や非常用電源に適用
日立製作所、低温動作で高出力発電を可能にする固体酸化物形燃料電池(SOFC)技術を開発した。工場の自家発電装置や災害時の非常用電源などに適用していく。
日立製作所は2025年7月、低温動作で高出力発電を可能にする固体酸化物形燃料電池(SOFC)技術を開発したと発表した。工場の自家発電装置や災害時の非常用電源などに適用していく。
SOFCは効率に優れた発電技術である。ところが、従来のSOFCは700℃という高温動作が必要である。「起動に要する時間が長い」「厚い断熱材が必要」といった課題もあって、一部用途では利用が制限されていた。
そこで日立は、従来の課題を解決するために2つの技術を開発した。その1つは燃料電池の構造を細かく分割して、セルごとに管理する技術である。分割した小型セルでアレイを形成。その上で、故障の可能性があるセルについてはスクリーニングによって除去する。これによって、全体の信頼性を向上させることができる。製造プロセスにおける歩留まりも向上する。
もう1つは、電解質層の厚みを均一に薄くすることで出力密度を向上させる技術である。厚みを均一にすることで、局所的な薄膜部分から生じやすい電子の漏れ電流を抑えた。この結果、SOFCの動作温度は519℃まで下がった。しかも、1W/cm2を超える出力密度を達成した。起動時間の短縮や断熱材の使用量削減も可能になるという。
左は複数の分割セルを内蔵したSOFCスタックの外観、右は内蔵SOFCセルの拡大図[クリックで拡大] 出所:日立製作所
日立は今後、SOFCのさらなる低温動作化や高出力化に向けた研究を継続していく。また、パートナー企業や補機メーカーとの協創により、産業用分散電源や可搬型電源として社会実装を目指すことにしている。
SEM画像解析とAI活用、製造途中で性能を予測 日立製作所
日立製作所と日立ハイテクは、製造ラインの立ち上げと歩留まり向上を支援する「プロセスインフォマティクス技術」を開発した。リチウムイオン電池の試作ラインに開発した技術を導入して検証したところ、中間工程品の段階において製品性能を高い精度で予測することに成功した。
半導体製造で10nm以下の微小欠陥を高感度で検出
日立製作所は、日立ハイテクの協力を得て、半導体製造工程で発生する10nm以下の微小な欠陥を、高い感度で検出できる画像処理技術を開発した。機械学習を活用することで、「欠陥」とそうではない「製造ばらつき」の判別が可能となり、過検出を90%以上も抑えた。
レーザーで回路パターン検査を高速化 東大の技術を実用化へ
日立ハイテクは、東京大学が開発したレーザー励起光電子顕微鏡(Laser-PEEM)の有用性を確認できたことから、半導体検査装置として実用化するため共同研究に乗り出した。同装置を用いれば、従来に比べ回路パターンの検査工程を大幅に短縮でき、歩留まり向上に貢献できるという。
もみ殻と鉱山副産物で「燃料電池用触媒」、白金の代替に
東北大学を中心とする研究グループは、農業廃棄物の「もみ殻」と鉱山副産物の「パイライト(黄鉄鉱)」を原料とする「燃料電池用触媒」を開発した。未利用資源から高性能な機能性材料を生み出した今回の成果は、希少資源である白金(Pt)の代替となるばかりでなく、持続可能な材料を開発する新たな取り組みとして注目される。
全固体電池内のイオン伝導度を高速、高精度に予測
東京科学大とクイーンズランド大学の研究グループは、全固体電池や燃料電池内のイオン伝導度を、高速かつ高精度に予測できる計算手法を開発した。「非平衡MD(分子動力学)法」と呼ばれるこの方法は、従来の平衡MD法に比べ100倍も高速に計算できるという。
中低温で高いプロトン伝導度を示す新物質を発見
東京工業大学は、これまでとは異なる設計戦略により、中低温(50〜500℃)で高いプロトン伝導度を示す新物質「BaSc0.8W0.2O2.8」を発見した。中低温で高い性能が得られる「プロトンセラミック燃料電池(PCFC)」の開発につながるとみられる。
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