また研究グループにとっては、大量のデータやユーザーを基地局に取り込まなければならないという課題を、極めて低いコストで解決しなくてはならなくなる。Rappaport氏によれば、通信事業者にとってコスト面で最大のネックの1つになっているのが、バックホールだという。しかし、ミリ波帯を利用できるようになれば、バックホールを提供することができる他、ユーザーの混雑も低減することが可能になる。同氏は、「高速の周波数受信/送信機を利用することが鍵となる」と述べる。
またRappaport氏は、基地局とネットワークとを接続する上で、光ファイバーが重要な役割を果たすとみている。さらに、ミリ波伝送が可能なアンテナを集約的に機能させることで、トラフィックにもうまく対応することができるという。今後は、高速の周波数受信/送信機を備えた“スマート中継増幅器”が、インテリジェントシステムに搭載されるようになるだろう。
こうした分野に関しては、Samsungが既に研究を進めている。同社は、2014年6月に開催されたIEEE International Microwave Symposium(IMS)において論文を発表し、同社スマートフォン「Galaxy Note」の回路基板の一角に16個のアンテナを搭載し、アダプティブアレイを実現したことを明らかにしている。
Rappaport氏は、「私はこれまで長い間、ミリ波帯を利用して、手のひらに収まるサイズの高利得なアダプティブアレイを実現できると確信してきた。携帯電話機のスマートアンテナに関するアイデアと、ミリ波帯の膨大な帯域幅とを組み合わせることにより、これまで存在しなかった完全に新しい形の無線を確実に実現することが可能になる」と述べる。
「携帯電話機市場、無線市場では、非常に激しい競争が繰り広げられ、半導体チップに適用される技術の進歩も目覚ましい。このため、これらの市場に参入しようとしても、既に壁が立ちはだかっているような状態にある。しかし、ミリ波帯技術によって全く新しい種類の課題が生み出されるため、新たな参入企業も戦いを挑むことができるようになる。ただしそれは、非常に困難な挑戦となるだろう」(同氏)との見通しを示している。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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