そして、4月に入って早々、中小型液晶ドライバ事業の譲渡を検討していることが明らかになる。中小型液晶ドライバ事業を行う連結子会社「ルネサスエスピードライバ」(以下、ルネサスSPドライバ)を“Appleへ売却”との一部報道が発端となり、ルネサスは「譲渡を含むさまざまな検討を行っている」と中小型液晶ドライバ事業で何らかの再編を行う方針であることを認めた。
業績低迷が続いた中でも、中小型液晶ドライバ事業は、Appleをはじめとした各社のスマートフォンに採用されるなどし、好調な業績を残していた。初の四半期黒字を達成した2013年10〜12月期も、車載向け半導体事業とともに業績に貢献した事業として名が上がっていたほどで、“優等生事業”いえる存在であり、「なぜ売却を検討するのか」という疑問を持つ関係者も多かった。
ルネサスSPドライバの処遇に注目が集まった2014年5月9日、2014年3月期通期決算説明会だったが、作田氏は「個別に申し上げることはない」とルネサスSPドライバに関しては言明を避けた。決算自体は、発足初年度(2011年3月期)以来の通期営業黒字を達成するなど構造改革の進捗(しんちょく)率は「4合目に来ている」(作田氏)と表現。「2014年度(2015年3月期)を終えた時点で、構造改革全体の6〜7合目まで進むだろう」との見通しを示し、構造改革はまだ道半ばであることを示した。
そしてその言葉通り、6月10日、ルネサスSPドライバの売却を発表した。売却先は、当初、報道されたAppleではなく、タッチセンサーコントローラICなどを手掛ける米シナプティクスだった。ルネサスSPドライバの譲渡に至った理由について、ルネサスは自動車、産業/通信、汎用という3つの注力分野に当てはまらないことを挙げた。なお、シナプティスへの譲渡が決定した直後の会見で、ルネサスSPドライバ社長(当時)の工藤郁夫氏は、「(シナプティクスによる)買収を発表できて良かった。ルネサスとは目指す方向性が違っていた」と語った。
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