Infineon Technologiesは、ドイツで開催中のパワー半導体の展示会「PCIM Europe 2016」(2016年5月10〜12日、ニュルンベルク)で、耐圧1200VのSiC MOSFETなどを展示した。
Infineon Technologiesは「PCIME Europe 2016」で、SiCを使ったパワー半導体の展示に力を入れた。同社はSiCパワー半導体を「CoolSiC」ブランドとして展開してきた。耐圧1200V/650V/600VのSBD(ショットキーバリアダイオード)と、同1200VのJEFT(接合型電界効果トランジスタ)がある。
これらに加え、同社は2016年5月4日(ドイツ時間)に、トレンチ型SiC MOSFETのサンプル出荷を2016年後半に開始すると発表した。Infineonにとって、市場に投入する製品としては初のSiC MOSFETとなる。まずは耐圧1200VのSiC MOSFETの量産を2017年に開始する。1200V品は、太陽光発電システムのパワーコンディショナーや蓄電池システム、UPS(無停電電源装置)といった用途に向ける。価格やコストについては具体的な数値は明らかにはせず、「これらのターゲット市場ではコストよりも省エネルギーというSiCの利点を選ぶ」と述べるにとどまった。
これにより、InfineonはSBDからJFET、MOSFETのSiCパワー半導体製品を網羅することになる。
SiC MOSFETの1200V品のオン抵抗は45mΩでしきい値電圧は4V。15V/−5Vのゲート電圧で駆動するので、一般的なシリコンIGBTと置き換えられるという。3端子または4端子のTO247パッケージで提供される。4端子パッケージはソースへの接続端子を1本増やすことで電圧降下を抑え、3端子パッケージに比べてスイッチング損失を低減できる。Infineonは、SiC SBDとSiC JFETを組み合わせたパワーモジュール「Easy1B」を提供しているが、将来的には、このEasy1BでもSiC JFETの代わりにSiC MOSFETを使えるようになる。
InfineonでSiCシニアディレクターを務めるPeter Friedrichs氏は、今後のSiC MOSFETの製品ロードマップとして耐圧1700V品の開発を挙げる。モーター駆動向けなど、ターゲット市場も広げていく。
Infineonは20年以上、SiCパワー半導体を開発してきた。Friedrichs氏は、「2001年に初めてSiCパワー半導体を市場に投入して以来、着実に製品ポートフォリオを増やしてきた」と話す。SiC MOSFETの開発についても、「もともとはプレーナ―型のSiC MOSFETを開発してきた。だが、プレーナ―型SiC MOSFETは性能と信頼性のトレードオフのバランスをどう取るかが課題だった。そこでわれわれはトレンチ型を選択して開発を進め、ようやくサンプル出荷ができるところまでたどりついた」と説明する。
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