ドイツで開催されたパワーエレクトロニクスの展示会「PCIM Europe 2016」では、SiCとGaNを用いたパワー半導体が多く展示された。パワーエレクトロニクス業界に40年以上身を置く、ECPE(European Center for Power Electronics)のプレジデントを務めるLeo Lorenz氏に、現在のパワー半導体の動向について話を聞いた。
この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。
ドイツ・ニュルンベルクで開催されたパワーエレクトロニクスの展示会「PCIM Europe 2016」(2016年5月10〜12日)では、SiCとGaNを使った次世代パワー半導体が最も注目を集めていた。ロームのドイツ法人であるROHM Semiconductorが、SiCパワーデバイスからモジュールまで一連の製品群を披露するなど、SiC/GaNパワーデバイス製品の展示は随所で見られ、展示会に合わせて関連の新製品を披露したメーカーも相次いだ。Infineon Technologies(以下、Infineon)は同社初となるSiC-MOSFETを披露し、フランスのGaNパワーデバイス専業メーカーであるExaganは、8インチのGaN on Siウエハーを紹介した。
特にSiCについては、SBD(ショットキーバリアダイオード)やMOSFETというディスクリートのデバイスだけでなく、SiC-SBDとSiC-MOSFETを搭載したフルSiCモジュールの量産も始まって既に数年以上が経過している。
パワーエレクトロニクス関連の研究開発プロジェクトを進める欧州の団体であるECPE(European Center for Power Electronics)のプレジデントで、40年近くにわたりパワーエレクトロニクス業界に携わってきたLeo Lorenz博士は、「SiCとGaNがパワーエレクトロニクス市場では重要になっているのは明らかだ」としながらも、「SiCには、大規模な量産が必要になるアプリケーションがまだ見つかっていないことが、普及加速の障壁になっている」との見解を述べる。
「例えばSiCについては、SiCを早くから採用してきた太陽光発電システムは、中国メーカーの台頭によって価格競争のプレッシャーにさらされた結果、シリコンが主流のままだ。電気自動車(EV)も、SiCのアプリケーションとしてよく挙げられるが、今後数年のうちに普及拡大が加速するような具体的な計画や戦略は何もない」(同氏)
なお、ECPEは、パワーエレクトロニクス関連の研究開発プロジェクトを進める欧州の団体だ。欧州に本拠地を構える約85社の企業が所属していて、これらの企業が資金を出しあって開発プロジェクトを進める。ECPE自体は研究所を持っていないので、欧州の大学や企業の研究所などでプロジェクトを行う。Lorenz氏は「こうした方法を採るのには2つ理由がある。1つは産学連携を促進するため。もう1つは、多岐にわたるパワーエレクトロニクス技術の開発を効率よく開発するためだ」と話す。ECPEに参加できる企業は基本的には欧州のメーカーだが、日本企業も複数社がメンバーになっている。三菱電機、富士電機、ローム、日立製作所、パナソニック、東芝などだ。「日本企業は優秀でプロジェクトへの貢献度も高い」(Lorenz氏)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.