成毛氏は、「グローバル市場で勝つには、技術開発と設備投資が必要だ」と強調する。経済の不透明感はあるが、財務基盤を重視しつつ、2018年まで8600億円をメモリ事業に投資予定とする。ウエスタンデジタルも2018年までに約50億米ドルを投資予定。つまり、2018年までに約1.4兆円を3D NANDに投じる。
東芝は2016年2月に3D NAND製造用に四日市工場の敷地拡張、同年3月には総額3600億円を投資して新製造棟を建設すると発表している。新棟は土地造成を2016年度、2017年度に建設を開始予定。2018年度に稼働する予定だ。Y3、Y4、N-Y2と同様に、第5製造棟(Y5)と新棟で3D NANDの連携生産を行い、2018年度以降の需要拡大に対応する。
新棟の建設に伴い、2018年度のフラッシュメモリ生産量(メモリ容量ベース)は、2015年度と比較して約3倍になると計画しているという。
両社は、3Dの技術開発にも注力する。2016年春には48層の3D NANDを発表しているが、同年上期中には64層まで積層数を増やした製品のサンプル出荷を始める予定。ナノインプリント技術による微細化や、成膜・エッチング加工などの高生産性設備の導入も進め、高集積度化とコスト競争力の強化を図る。成毛氏は「3D構造で、セル密度を向上した先には、1つの候補としてReRAM(抵抗変化メモリ)の開発を考えている」と語る。
また、東芝の3D NANDが持つ強みとして「当社は技術開発の点で他社に負けていない。チャージトラップ方式の特性評価や、積層技術がどのように応力緩和すればいいかなど、開発レベルの要素技術は知見を積んでいる」(成毛氏)とする。一方で、3D NAND分野ではSamsung Electronicsが巨額な投資を行い、他社を先行している状況だ。
成毛氏は、「当社は競合と比較して、量産化までの経験値が足りていない。他社には既に32層の経験があるが、当社にはない。そのため、48層を量産化する上で、思ってもいない装置のバラつきや、装置の組み合わせによる歩留まりロスが発生している。それらをどう対策するか学びながら、量産化を現在体感している状況だ。しかし、ベースとなる力は、2Dでサンディスクと多くの実績を積んできた。量産化までに時間はかかるかもしれないが、他社に追い付くことができると考えている」と語った。
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