Tessera Technologiesの完全子会社である米FotoNationは、一連の新しい生体認証アルゴリズムを開発したと発表した。顔認識および虹彩認識技術を適用することで、スマートフォンのパスワードを不要にすることが可能だという。
FotoNationでゼネラルマネジャーを務めるSumat Mehra氏は、「当社は、これまで10年以上にわたり、ニコンをはじめとする数多くのカメラメーカーやスマートフォンメーカーに向けて、“赤目軽減”アルゴリズムのライセンスを供与してきた。このため、これらのメーカー各社は、当社の新しいアルゴリズムを容易に採用することができるだろう」と述べている。
同氏は、「FotoNationは業界で初めて、フラッシュを2つ使わなくても赤目を軽減することが可能な、アルゴリズムの開発に成功した。このアルゴリズムは現在、10品種中9品種のカメラに採用されている」と述べる。
Mehra氏は、「当社のアルゴリズムはもともと、ホストアプリケーションプロセッサ上でソフトウェアとして動作していた。しかし今回、ライセンス供与が可能なハードウェアアクセラレーターIP(Intellectual Property)を独自開発したことにより、処理時間を100ミリ秒に低減しながら、ハッカーの攻撃にも耐え得る性能を実現した」と述べている。同社のアルゴリズムは2014年当時、スマートフォン市場全体の60%に採用されていた。また同社は、2015年にMirlinを買収し、個人の顔の特徴を追尾する虹彩認証の実現に向け、生体認証IPを取得している。
Mehta氏は、「当社は現在、カメラやスマートフォン市場において圧倒的な優位性を確立しているが、今後は自動車市場や監視市場などでも新たな可能性を求めていきたい考えだ。Mirlinの虹彩認証技術はこれまでに、欧州の空港や、戦闘機のパイロット認証で採用されている他、イラクでは人物の識別に使われるなど、実績を積み重ねてきた」と述べる。
FotoNationによると、優れた虹彩認証を実現するさまざまなアルゴリズムが存在する中で、クラウドコンピューティングリソースへの接続が不要なのは、同社のIPだけだという。Mehta氏は、「当社と互角の競合企業の他人受入率(FAR:False Acceptance Rate)が、1万分の1であるのに対し、当社は、スタンドアロンモードの動作時で、1000万分の1を実現している。これほどまでの精度を達成できたのは、両目の虹彩を同時に追跡する顔認証を実現することに成功したからだ」と主張する。
FotoNationのアルゴリズムは、ユーザーデータ上でディープラーニング(深層学習)を実行するマルチレイヤーニューラルネットワークをベースとしている。顔の特徴も追跡できるため、ユーザーがスマートフォンを凝視する必要がない。またMehta氏によると、ユーザーの顔写真を撮影することにより、なりすましを防ぐことも可能だという。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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