ルネサス エレクトロニクスは2016年10月24日、産業機器向けの高性能組み込みプロセッサとともに動作検証済みのLinuxとミドルウェア群および開発環境などを提供する「RZ/G Linuxプラットフォーム」を開発したと発表した。同日から国内のユーザーを対象に、同プラットフォームの提供を開始した。
「産業機器分野で組み込みLinuxを導入しやすい環境を作る必要があった」
2016年10月24日、ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)が提供を開始した「RZ/G Linuxプラットフォーム」の開発の狙いについて担当者は、このように語った。
ルネサスは、2015年4月にそれまでカーナビなど車載情報機器向けに展開してきた高性能組み込みプロセッサ「R-Car」を産業機器用途に最適化し「RZ/Gシリーズ」として製品化。最新カーナビに用いられるような高度な画像処理性能やネットワーク機能を、RZ/Gシリーズを通じて産業機器用途に提案。「昨今は、産業機器でも、より豊かなヒューマンマシンインタフェース(HMI)を実現し、ネットワークにつなげたいというニーズが高まっている。そうしたニーズに応えられるプロセッサとしてRZ/Gシリーズは好評で多くの引き合いを得てきた」(同社第二ソリューション事業本部ICT・ソリューション事業部シニアエキスパート渡辺照一氏)という。
しかし、「産業機器分野の多くのユーザーは、これまでリアルタイムOS(RTOS)をベースにしたシステム開発が主体で、(RZ/Gシリーズの性能を引き出すために必要な)Linuxベースでのシステム開発には慣れておらず、RZ/Gシリーズ導入の大きな障壁になるという課題も浮き彫りになった」と付け加える。
そこでルネサスは、通常、サンプルとして提供しているOS、ミドルウェアを、動作検証済みのソフトウェアパッケージとして提供し、ユーザー側でのOS、ミドルウェアの開発、検証に掛かる手間を大きく削減する「RZ/G Linuxプラットフォーム」の提供を決定した。
ルネサスにとって、組み込みプロセッサとともに検証済みソフトウェアを提供するビジネスモデルは「Renesas Synergyプラットフォーム」(以下、Synergy)に次いで2例目であり、「RZ/G Linuxプラットフォームには、Synergyで得たノウハウを多く取り入れている」とする。
RZ/G Linuxプラットフォームでは、ルネサスが動作検証したLinuxとマルチメディア(H.264コーデック/3Dグラフィックス)、セキュリティ、GUIフレームワークなどのミドルウェアで構成するソフトウェアパッケージ「Linux標準パッケージ」と、クラウドベースの開発環境が提供される。
開発環境は、「ビルド」「検証」「解析」の各工程に応じたツールを準備。検証ツールでは、ルネサスが動作検証を行うために実施した2000以上の検証パターンが用意され、ユーザー自身でも動作検証を確認できる他、ユーザー独自の検証パターンも実行できる。解析ツールは、検証ツールのエラーレポートから、ルネサスが構築してきた問題解決ノウハウのデータベースを自動的に解析し、原因と対応策の候補リストを出力する。「データベースには、ルネサスのノウハウが詰まっており、恐らくほとんどのエラーに対処できる解決策が提示できるだろう」とし、「ユーザーはLinux BSPのカスタマイズ作業、システム検証によるデバッグの開発工数を40%以上削減できるだろう」としている。
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