NXP Semiconductors(NXPセミコンダクターズ)を買収するQualcomm(クアルコム)だが、V2X(Vehicle-to-Everything)において両社が推進する技術は異なる。NXPはDSRC(狭域通信)を、QualcommはセルラーV2Xを支持してきた。NXPを買収する今、Qualcommは、これについてどう考えているのか。
自動車メーカーは、高性能自動運転車で実現できることと実現できないことについて理解を深めるにつれ、V2V(Vehicle-to-Vehicle)やV2I(Vehicle-to-Infrastructure)などのV2X(Vehicle to Everything)技術を手放せなくなってきたようだ。
自動車メーカーの多くは、V2Xについて、予測可能な安全性を提供することができる、必要不可欠な技術だと考えている。車載用センサーの場合は、“検知できるもの”でなくては対応することはできない。高度に自動化されたクルマはいずれ、V2Xによって、何キロも先の状況について予測した情報を利用できるようになるだろう。
自動車業界は、V2Xの価値を十分に認識している。しかし残念なことに、その状態のまま、V2Xをめぐる業界の合意が行き詰まっているのだ。
V2Xに関しては現在、IEEE 802.11pベースのDSRC(狭域通信)の採用を推進する団体と、LTEやLTE-D(LTE Direct)、5G(第5世代移動通信)などを採用する、セルラーベースのV2Xコネクティビティーを提唱する団体とに分裂している状況にある。
Qualcomm(クアルコム)がNXP Semiconductors(NXPセミコンダクターズ)を買収するが、それによってV2X実現への道のりが明確になるわけではなさそうだ。
NXPは、DSRCベースのV2Xを強力に支持している。同社は、ドイツ・ミュンヘンで開催された「electronica 2016」(2016年11月8〜11日)において、ミュンヘン市街の路上で「トラックプラトーニング」(truck platooning)を実演してみせた。一方のQualcommは、セルラー無線技術ベースのV2Xを一貫して推進してきた。
EE Timesは2016年11月、Qualcommのエンジニアリング担当シニアバイスプレジデントであるDurga Malladi氏と、標準規格担当シニアディレクターを務めるDino Flore氏にインタビューを行った。Flore氏は、3GPP RANグループのチェアマンも務めている。現在、V2X無線技術をめぐる係争がどのように展開されているのか、両氏に質問した。
EE Times LTE-V2Xの現在の状況は。
Malladi氏 まず、われわれは「LTE-V2X」ではなく、「セルラーV2X」と呼んでいる。一度限りの取り決めではなく、今後も新たな要素が追加されていく、持続的なセルラー革命だと考えているからだ。
EE Times V2Xの構成要素は。
Malladi氏 Vehicle-to-Vehicle(衝突回避安全システム)と、Vehicle-to-Network(リアルタイムトラフィック/ルーティング、クラウドサービス)、Vehicle-to-Infrastructure(トラフィックシグナルのタイミング/プライオリティ)、Vehicle-to-Pedestrian(歩行者や自転車運転車に対する安全警告)の、4つの構成要素がある。
EE Times Qualcommは、どのようにV2Xに関与してきたのか。
Malladi氏 まず、LTE Directを開発した。LTE Directは現在、LTE規格の一部となっている。LTE Directは、Device-to-Device(D2D:端末から端末)技術であり、ネットワーク接続せずに、数千台ものデバイスを迅速に検出することが可能だ。
LTE Directのプロトコルは、完全に自動で検出することができる。ネットワーク接続が不要なため、デバイスの電池を消耗することがない。
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