NXP Semiconductors(NXPセミコンダクターズ)によるFreescale Semiconductor(フリースケール・セミコンダクター)の買収が完了したのは、約1年前だ。これによりNXPは車載半導体サプライヤーのランキングで首位に立ったが、NXPが統合作業を進める間、ルネサス エレクトロニクスも同市場でのシェアをさらに伸ばしていたようだ。
NXP Semiconductors(NXPセミコンダクターズ)とFreescale Semiconductor(フリースケール・セミコンダクター)が合併・統合にまい進している間に、ルネサス エレクトロニクスは車載マイコンおよびSoC(System on Chip)の市場シェアをひそかに伸ばしていたようだ。
2015年にFreescaleの買収が完了したことによって、NXPが世界最大の車載チップベンダーになったことは間違いない。市場調査会社のStrategy Analyticsによると、2015年の2社の車載チップの売り上げは合計で39億米ドルに達した。2015年の自動車用半導体市場全体の売上高は274億米ドルだったので、NXPは14.2%という市場シェアを獲得したことになる。
ここで、市場セグメント別にさらに分析してみよう。
Strategy Analyticsの2015年のデータを引用すると、ルネサスは、自動車コックピット用MCUおよびSoC分野で47%もの市場シェア(売上高ベース)を獲得したとしている他、車載計器クラスタ用MCUおよびSoC分野でのシェアも44%に達したと主張している。同社の概算では、ルネサスは現在、これらの2分野で世界トップの座にあるという。
ルネサス 第一ソリューション事業本部 車載情報ソリューション事業部 事業部長を務める鈴木正宏氏は、2016年11月、EE Timesのインタビューで、「当社のビジネスは成長しており、市場での勢いを取り戻しつつある」と語った。
鈴木氏はルネサスの“逆転”の要因について、旧Freescaleの製品ラインアップに“隙間”があったこと(NXPが最新の「i.MX 8」を発表したので、現在ではこの“隙間”は埋まっている)、Texas Instrumentが「OMAP」DSPをベースにした車載インフォテインメント用SoC「Jacinto」の後継品を、その時点で発表していなかったことを挙げた。
だが、これらの要因が全てではない。
鈴木氏はEE Timesとの独占インタビューの中で、ルネサスが2015年度中に車載チップで記録的な数のデザイン・インを獲得したと言及した。ルネサスは、そのようなデザイン・インの価値は45億米ドルを超えるとしている。
鈴木氏は、ルネサスが2016年10月に発表した開発キット「R-Carスタータキット」についても言及した。同キットは現在、飛ぶように売れているという。
最も重要なこととして、鈴木氏は、ルネサスが2017年1月に米国ラスベガスで開催される「2017 International CES」で、新しい組み込み型ビジョンプロセッサを発表する計画を明らかにした。鈴木氏は同プロセッサを「MobileyeのビジョンSoCに置き換わるもの」と説明するにとどめ、詳細は明らかにしなかった。同氏によると、多くの自動車メーカーやティア1サプライヤーが、そのようなプロセッサを長年待ち望んでいたという。
今後数年間にわたり、数々のデザインウィンが進行することを踏まえると、ルネサスから見れば、同社の車載半導体事業は極めて順調といえる。
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