作製した薄膜は、磁性/非磁性/磁性の3層構造となり、磁性層の保磁力*3)に差を持たせることで、2つの磁性層の磁化方向を制御できるようになった。「このような磁化の制御法は、現在のハードディスクドライブの磁気ヘッドに用いられる巨大磁気抵抗効果(GMR)素子としてよく知られている」(共同研究グループ)。
*3)保磁力:磁性体の磁化を反転させるのに必要な外部磁場の大きさ
共同研究グループでは、作製した薄膜試料に対し、垂直方向に外部磁場を印加して磁化方向をそろえたところ、「量子異常ホール効果が観測された」とする。そして、外部磁場の印加方向を反転させて徐々に強くすると、ある大きさの磁場で保磁力の小さい層の磁化が反転。その結果、磁化の反転、2つの磁性層の磁化が反平行になる状態ができると同時に薄膜試料に電流が流れなくなり、表面が完全に絶縁化したという。
「これは磁化の方向を制御することで、トポロジカル絶縁体の表面を絶縁化し、量子異常ホール効果から特殊な電気磁気効果の観測が期待される絶縁体状態へ変換できたことを示している。この結果は、磁性トポロジカル絶縁体の磁化方向制御によって、特殊な電気磁気効果観測のための物質基盤を確立したことになる」(共同研究グループ)としている。
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