東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の相馬清吾准教授らによる研究グループは、新しいトポロジカル物質「ワイル半金属」を発見した。
東北大学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の相馬清吾准教授らによる研究グループは2016年4月、新しいトポロジカル物質「ワイル半金属」を発見したと発表した。研究成果は、超高速で電力消費が極めて小さい次世代デバイスの開発に弾みをつけるとみられている。
今回の成果は、相馬氏の他、AIMRの高橋隆教授、同理学研究科の佐藤宇史准教授、大阪大学産業科学研究所の小口多美夫教授、ドイツ・ケルン大学の安藤陽一教授らの共同研究によるものである。
次世代デバイスの研究テーマとして、物質中を高速に移動する「ディラック電子」を持つ物質が注目されている。その代表的な物質がグラフェンである。ディラック電子は、シリコンに比べて10倍以上の移動度を持つといわれている。2次元領域に存在するディラック電子に対して、3次元空間で質量ゼロの粒子が「ワイル粒子」である。ワイル粒子は87年前に提案されているものの、これまで素粒子として実証された事例はないという。最近は、このワイル粒子を内包した新種の物質として「ワイル半金属」が理論的に提案されている。
研究グループは、NbP(リン化ニオブ)の高品質大型単結晶を育成することに成功した。そして、角度分解光電子分光と呼ぶ手法を用いて、NbPから電子を直接引き出し、そのエネルギー状態を高い精度で検出した。理論的にはワイル半金属の表面で、「フェルミ弧」と呼ばれる、開いた形状の電子状態が発現すると予測されている。
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