ルネサス エレクトロニクスは、SOTB(Silicon On Thin BOX)プロセス技術を用いた、ASSP向け低消費電力SRAMを試作した。基板バイアスを制御することにより、極めて小さいスタンバイ電力と高速読み出し動作を実現する。
ルネサス エレクトロニクスは2017年6月8日、SOTB(Silicon On Thin BOX)プロセス技術を用いた、ASSP向け低消費電力SRAMを試作したと発表した。基板バイアスを制御することにより、極めて小さいスタンバイ電力と高速読み出し動作を両立することに成功した。
独自開発を進めているSOTBプロセス技術は、ウエハー基板上の薄膜シリコン層の下に、埋め込み酸化膜層(BOX:Buried Oxide)を形成した構造である。薄膜シリコン層に不純物を注入する必要のないドーパントレスチャネル構造のトランジスタを作成することができる。素子の特性ばらつきを抑え、オン電流とオフ電流の比率改善に優れているなどの特長がある。
ドーパントレスチャネル構造のトランジスタは、一般的にプレーナ型バルク構造のトランジスタに比べて、しきい値ばらつきを約3分の1に低減することができるという。この値は16nm FinFETデバイスと同等であり、0.5V程度の低電圧でも安定した動作を実現できる。
BOX層を薄くしたことで、BOX層下部のシリコン基板電位をより高い精度で制御し、トランジスタのしきい値特性を変更することが可能である。今回、65nmプロセスノードを用いて試作したSRAMは、基板バイアスを動的に制御するためのオンチップレギュレーター回路も備えた。基板バイアスを制御することによって、「通常モード」「低電力モード」「高速モード」と3つの動作モードおよび、「スタンバイモード」を選択することができる。
基板電位をゼロバイアスから順バイアスへ動的に制御し、動作モードを「通常」から「高速」に切り替えると、4.58ナノ秒であった読み出しアクセス時間が、1.84ナノ秒へと高速になる。この数値は、クロック周波数で380MHzに相当する。従来の通常モードに比べて2.5倍も高速である。
一方、スタンバイモードでは基板電位に逆バイアスを印加する。これにより、スタンバイ時の消費電力は13.7nW/Mビットと極めて小さくなる。この数値は、従来技術に比べて半分以下だという。アクティブ動作時の消費電力に比べると1000分の1となる。同社は「世界最小のスタンバイ特性」と主張する。
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