IBMなどが積層シリコンナノシートをベースにした新しいトランジスタ(シリコンナノシートトランジスタ)アーキテクチャを開発した。5nmノードの実現に向けて、FinFETに代わる技術として注目される。
IBMの研究チームは、パートナー企業と共に、積層シリコンナノシートをベースにした新しいトランジスタ(シリコンナノシートトランジスタ)アーキテクチャを開発したと発表した。5nmノードの実現に向けて、FinFETに代わる技術として適用できるという。
同アーキテクチャは2017年6月5日、京都で開催された半導体の回路技術に関する国際学会「2017 Symposia on VLSI Technology and Circuits」(2017年6月5〜8日)で発表された。研究アライアンスパートナーであるGLOBALFOUNDRIESとSamsung Electronics、製造装置メーカーらとの約10年にわたるナノシートの研究の末、開発に成功したという。同アーキテクチャは、FinFETと比べて消費電力を大幅に削減できるという。
シリコンナノシートトランジスタによって、スマートフォンなどのモバイル機器は1回のバッテリー充電で2〜3日間動作できるようになるという。また、性能が大きく向上することから、AI(人工知能)やVR(仮想現実)、スーパーコンピュータ(スパコン)への活用も期待できるとする。
同研究アライアンスは、200億個のトランジスタを搭載した7nmプロセスのテストチップを開発してから2年もたたずして、爪の先ほどのサイズのチップに300億個のトランジスタを搭載することに成功した。同トランジスタは、ナノワイヤをゲート電極で取り囲むGAA(Gate-All-Around)構造を採用したものだ。テスト結果では、同じ電力の7nm FinFETに比べて、性能が40%向上したという。さらに、10nmプロセスのトランジスタに比べると消費電力を最大75%削減できるとした。
IBMは、「5nmの実現に向けたこの新技術は、チップの性能を大きく向上するため、コグニティブコンピューティングや、より高いスループットを実現するクラウドコンピューティング、ディープラーニングにも貢献できると期待している。また、IoT(モノのインターネット)に必要な低消費電力、長時間バッテリー駆動という特長も備えている」と説明している。
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