Spreadtrumは2010年に世界初の40nmプロセス技術を用いた3Gモデムを発売したことで、一躍業界で有名になったメーカーである。本社は中国上海にあり、ミドル仕様からスーパーローエンドまで、スマートフォン仕様の裾野の広がりを作るにはふさわしいチップを提供するメーカーだ。
2014年にはFirefoxのOSを用いた25米ドルのスマートフォンがMozillaから発表され話題になった。その際に採用されたプラットフォームもSpreadtrumのエントリー向けチップセットだった。この時は、他が追従できない低価格チップセットプレーヤーとして大いに話題になり、注目を集めた。このようにSpreadtrumは“スーパーローエンド”を実現できるメーカーなのだ。
Spreadrumのチップセットは、通信を行うRFトランシーバー、デジタルチップとしては、モデム機能のベースバンドと、AndroidなどのOSを動かしてアプリケーションを実行するプロセッサを一体化させている。また、プロセッサの電力を最適化し、電池寿命を最大化するための電源ICの他、Wi-Fi/Bluetooth/GNSS(全地球航法衛星システム)を1チップ化したコンボチップで構成されている。この点では他メーカーのチップセットとほぼ同等の構成になっている。
図3は、Huawei MediaPad LTEで使われるSpreadtrumのチップ開封の様子である。実際には配線層があって中身が見えないので、配線層を剥いでいる。
具体的な数字は掲載しないが、Spreadtrumのチップはどれをとっても競合チップよりも、二回りほど小さい。半導体チップの「一回り」は、各辺1mmほど小さいと捉えていただきたい。二回りとは、他のチップセットが8mm角であればSpreadtrumのチップは6mm角ということになる。
つまり、8×8=64、6×6=36。おおよそ半分の面積だ。同じ価格のウエハーを使えば、ほぼ2倍の良品が採れることになる。ちなみにSpreadtrumの電源ICのチップサイズは7mm2にも満たない。同世代のQualcomm「Snapdragon 617」用の電源ICは21mm2を超えているので、Spreadtrumの電源ICの面積は、実に3分の1ということになる。
機能の差は確かにあるだろう。しかしローエンド〜ミドル市場向けとして、不要な機能を徹底的に取り払うと、同じ世代の、同様市場向けでも、チップ面積には上記のような差が生まれる。これが、ほぼそのままコストにつながっているわけだ。
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