中国はARMなどの汎用IP(Intellectual Property)を使うことで「デジタルでは日米欧に追いついた」と、言われて久しい。しかしデジタルだけではなく、アナログも世界トップクラスの実力を持っている。RFトランシーバーや電源ICなど、チップのほぼ8割の領域がアナログ回路で構成されるチップも、中国では続々とチップセットの一部として開発され、販売されている。その出来栄えは、通信に支障を来すようなこともなく、電源制御も正常に行われていて、全く問題ない(筆者が代表を務めるテカナリエでは、今回報告したMediaPadを通常業務の一部に使っているが、現在までヘビーユースも含めて問題に遭遇していない!)。
中国はデジタルだけでなくアナログも十分に開発し、スマートフォン市場を形成できるトップクラスだと判断して良いのではなかろうか。
中国には、Spreadtrumのような、デジタル/アナログ混載のチップセットを供給できるプレーヤーが他にも数社ある。Huawei傘下のHiSilicon、Leadcoreなどだ。
1社でチップセットを構成していないものの、中国チップだけでチップセットを構築する例もある。例えば、Allwinner(デジタル)+X-Powers(電源IC)+RDA(トランシーバー)といった具合だ。必ずしも1社だけでチップセットを構築する必要はなく、最適な組み合わせで、システムが作れることが重要だ。その点で、中国にはデジタルもアナログも多くのメーカーが存在するので、今後新たな「黄金の組み合わせ」も生まれてくるだろう。
表1はSpreadtrumの過去製品の変遷である。日米欧は2G向け⇒3G向け⇒4G向けチップと、20年の歳月をかけて開発してきた。しかし、Spreadtrumは半分以下の時間で、トップに並んでいる。追う者の時間は短く、そして速い。機能、品質、製造、どれを取っても難しい仕事であるにもかかわらず、だ。
しかし追う者は、機能で追い付くことによりスマホ市場での成功を遂げた。品質と製造は、機能よりも難しいという人がいる。果たして本当にそうなのだろうか。
品質や製造が日本よりも劣るといわれる米国(筆者は全くそう思わない!!)が、半導体で日本を大きく引き離し始めている。中国は、品質や製造で劣るから、まだまだ大丈夫だという人もいる。本当にそうだろうか。
機能こそが、半導体では最も重要なのではないだろうか。多少出来の悪いチップは、実装技術やソフトウェア技術でカバーできることもある。むしろそうした事例は多い。しかし機能の劣るチップは、その機能を果たせないのだから、使い物にならない。
Spreadtrumは、各世代の製品で、最小機能をきちんと定義でき、その上で極限ともいえるローコストを実現してきた。ここに今の中国の本当の強さ、今後の脅威があるのではないだろうか。
なお、Spreadtrumは2017年、ARMコアではなくIntelの「Atom」コアを使った新チップ「SC9861G」を発表している――。
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