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量子コンピュータの量子的エラーを迅速に評価見かけだけの重ね合わせも発見

東京大学と科学技術振興機構(JST)は、一般的なデスクトップPCを用いて、量子コンピュータの内部で発生する量子的なエラーを正確かつ高速に評価することができる数値計算手法を見いだした。

» 2017年11月10日 10時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

自由フェルミ粒子系の計算手法を適用

 東京大学と科学技術振興機構(JST)は2017年11月、量子コンピュータの内部で発生する量子的なエラーを、正確かつ高速に評価することができる数値計算手法を見いだした。これらの計算にはこれまで、量子コンピュータレベルの性能を必要としていた。今回開発した手法を用いると、一般的なデスクトップPCレベルの性能で容易に実行することが可能となる。

 量子コンピュータは、量子力学の重ね合わせの原理を活用して、素因数分解や量子化学計算などを高速に解くことができる。しかし、わずかにエラーをもつ素子(量子ビット)を組み合わせているため、量子的なエラーを訂正しながら計算を続ける仕組みが必要になるという。ところが、その仕組みを設計するために、エラーの影響を正しく見積もらなければならず、量子コンピュータ並みの演算能力が求められていた。

ビットエラーと量子的なエラーの概要 出典:東京大学、JST

 研究グループは今回、量子コンピュータが量子的なエラーを訂正していくための機構が、自由フェルミ粒子系の物理モデルに正確にあてはまることを示した。これにより、対応するフェルミ粒子系の時間変化を、デスクトップPCレベルで模擬することができ、量子コンピュータのエラー特性を、正確かつ高速に評価することが可能となった。

量子コンピュータが誤り訂正を行う様子をフェルミ粒子の運動に置き換えた 出典:東京大学、JST

 今回の成果について研究グループは、「量子コンピュータの全動作を、効率的に扱える枠組みで置き換えられるわけではないが、開発した手法を用いることで、量子誤り訂正の機構を正確かつ高速に追跡できることを示した」とコメント。さらに、「複雑な重ね合わせの状態の中に、量子コンピュータの高速化には寄与しない『見かけだけの』重ね合わせ状態があることを明らかにしたことは、量子コンピュータが高速に動作する真の理由に一歩近づいた」とみている。

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