帝人フロンティアは、次世代パワー半導体材料として期待されるSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)の仕上げ加工を、高速かつ低コストで実現できる研磨パッドを開発した。
科学技術振興機構(JST)は2017年8月、パワー半導体材料として期待されているSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)の仕上げ加工を、高速かつ低コストで実現できる研磨パッドを、帝人フロンティアが開発したと発表した。
この研究は、立命館大学理工学部の谷泰弘教授らによる研究成果を基にしている。帝人に開発を委託(2013年10月〜2017年3月)し、同社高機能繊維・複合材料事業グループ(現在は帝人フロンティア)が実用化に向けた開発を行ってきた。JSTは、産学共同実用化開発事業(NexTEP)の開発課題として取り組んできた今回の「高生産性精密研磨パッドの開発」が成功したと認定した。
SiCやGaNなどを用いたパワー半導体は、一般的なSi(シリコン)ベースのパワー半導体に比べて高耐圧、低損失、高周波動作といった特長を持つことから、これらの半導体を搭載したシステムの省エネ効果などが期待されている。一方で、SiCの硬度はSiに比べて約4倍も硬く、加工性と生産性が課題となっていた。
そこで今回、2つの技術を組み合わせ、「高研磨レート」と「低表面粗さおよび平たん性」を両立できる研磨パッドを開発した。その技術の1つは、繊維直径が700nmのナノファイバー繊維を用いた不織布の開発である。作製した不織布は、スラリー(研磨剤)の吸い込みや付着性を向上させた。
ナノファイバーの繊維間で砥粒を捉えることで作用砥粒数が増え、研磨レートを改善できたという。また、ナノファイバーは繊維表面積が大きいためゼータ電位も高く、スラリー中の砥粒が凝集することを抑えることで、ウエハー表面がより滑らかになる。
もう1つは、高硬度樹脂を高密度に含浸する技術の確立である。含浸させる樹脂としては、既存樹脂(ウレタン)を用いた研磨パッドの他、次世代樹脂を用いた研磨パッドも開発した。試作した研磨パッドを用いて、評価を行ったところ、既存樹脂を用いた研磨パッドは、従来品と同等の滑らかさを、より早く実現することができた。次世代樹脂による研磨パッドを用いると、より滑らかに、より早く研磨が可能となることが分かった。

 左は従来品と既存樹脂(ウレタン)の研磨パッドで、それぞれSiC(Si面)研磨を行ったデータ比較。右は従来品と次世代樹脂を用いた研磨パッドで、それぞれSiC(Si面)研磨を行ったデータの比較 (クリックで拡大) 出典:JST
左は従来品と既存樹脂(ウレタン)の研磨パッドで、それぞれSiC(Si面)研磨を行ったデータ比較。右は従来品と次世代樹脂を用いた研磨パッドで、それぞれSiC(Si面)研磨を行ったデータの比較 (クリックで拡大) 出典:JSTJSTは今回の成果について、「難加工材の研磨工程において、高速化と低コスト化が可能となり、難加工材半導体の生産性が向上する。これによって、高機能パワー半導体の普及が加速するのではないか」とみている。
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