東京大学の川原圭博准教授らの研究グループは、印刷技術を用いて、薄くて柔らかい軽量なモーターの作製に成功した。ソフトロボットへの応用などが期待される。
東京大学大学院情報理工学系研究科の川原圭博准教授と新山龍馬講師らの研究グループは2017年5月、印刷技術を用いて、薄くて柔らかい軽量なモーターの作製に成功したと発表した。「ソフトロボット」のアクチュエーターなどへの応用が期待される。
新たに作製したモーター本体は、低温で沸騰する有機溶剤「アセトン」や「3M Novec 7000」などの液体を小さな袋に封入したものである。印刷技術で作製したヒーターを用いて外部から袋(モーター)を加熱すると、袋内部の液体が気化され、体積が変化することによって駆動する仕組みである。ヒーターによる加熱を止めると、気体は液体に変化し、袋も元の形に戻る。ヒーターによる加熱を電子的に制御すれば、ロボットの関節を曲げ伸ばしする動作などを行うことができる。
作製したモーターの形状は80×26mmと小さく、重さは約3gと極めて軽い。試作品は小型軽量ながら、実験では最大約0.1N・mの回転力を発生させることができたという。最大動作角度は90度に達する。加熱用のヒーターは、厚み135μmのPETフィルム上に、インクジェットプリンタを用いて銀ナノインクで印刷した。
モーターを作製する工程は大きく2つに分かれる。1つはインクジェットプリンタと銀ナノインクを用いたヒーターの作製。もう1つはプラスチックフィルムを用いた袋の作製である。袋は2枚重ねのフィルムをコンピュータ制御で熱融着する。このため、自由な形状の袋を作成することができる。その後、液体を入れて袋を閉じれば完成する。A4サイズ程度のモーターであれば、数万円以下の装置と数十分の作業時間で作製できるという。
研究グループは、開発した作製手法を用いて、昆虫や植物などを模倣したソフトロボットを試作した。さらに、折り紙ロボットへの応用例として、紙のような形状から自動で立体的に組み上がる箱を作製した。今後は、加熱方式を工夫することで、モーターの動作速度や出力を向上させていく予定である。
今回の研究成果は、シンガポールで開催されるロボットとオートメーションに関する国際会議で、2017年5月30日(現地時間)に発表する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.