車載半導体シェア首位ながら、Qualcommによる買収を間近に控えるNXP Semiconductors。今後、どのような車載半導体ビジネス戦略を描いているのか。同社オートモーティブ事業部門の最高技術責任者(CTO)を務めるLars Reger氏に聞いた。
2015年末にFreescale Semiconductorの買収を完了させ、Infineon Technologiesやルネサス エレクトロニクスを交わして、車載半導体世界シェア首位に躍り出たNXP Semiconductors。自動運転化や電動化などにより今後も継続的な成長が見込まれ、半導体メーカー各社が力を注ぐ車載半導体市場で最も主導権を発揮できる地位に就いた。
しかしその一方で、Qualcommに約470億米ドルという半導体業界過去最高額で買収されることが決定し、各国関係当局の承認がおり次第、Qualcommに統合される状況でもある。
車載半導体首位のNXP Semiconductorsは、これからどういった車載半導体ビジネスを展開するつもりなのか――。NXP Semiconductorsオートモーティブ事業部で最高技術責任者(CTO)を務めるLars Reger氏に聞いた。
EE Times Japan(以下、EETJ) 現在のNXP Semiconductors(以下、NXP)の自動車向け事業の概況について教えてください。
Lars Reger氏 2015年12月にFreescale Semiconductor(以下、Freescale)と合併し、NXPは自動車に必要な全ての半導体を手に入れることができた。「コネクティビティー」「電動化」そして「自動運転」という、3つの自動車業界の大きなトレンドを実現できる体制が整っている。
同時に車載半導体売上高規模も、競合のInfineon Technologiesやルネサス エレクトロニクスの1.5倍近くに達し、シェア首位となった。製品別シェアでも、(NXPの前身である)Philips時代のカーラジオ向けからの流れをくむインフォテインメント向けをはじめ、CANコントローラーなど車内ネットワーク向け、パワートレイン向けなどの多くのアプリケーションで世界トップシェアとなった。
また、クレジットカードや電子パスポートなどに広く採用され、NXPが得意とするセキュリティチップについても、自動車に搭載すべく取り組んでいる。
思い返せば、私が2008年にNXPに入社したころは、顧客に製品のデータシートを見せて話をするだけだった。Freescaleとの合併などを経た今は、顧客から「NXPはコンセプトカーが作れるのでは?」と尋ねられるぐらい顧客との会話は変わった。
EETJ 「コネクティビティー」「電動化」「自動運転」という3つのトレンドは、どの程度のビジネスチャンスをもたらすと考えていますか。
Reger氏 現時点で、自動車に搭載される半導体の量(金額ベース)は、平均で約400米ドルだと捉えている。これが今後10〜15年で3倍に増え、1200米ドルほどになると見ている。増える要因は、コネクティビティー、電動化、自動運転だと考えている。
EETJ 3つのトレンドの中でも、自動運転が大きな注目を集めています。
Reger氏 自動運転は、最も社会に与える影響度が大きい。単にドライバーを運転操作から解放するだけでなく、人為的ミスに起因する事故を防ぐことができるようになる。世界で年間140万人以上の人が交通事故で亡くなっているが、その90%は人為的なミスが原因としている。この不幸を招く方程式から、人間による操作を取り除けば、年間120万人以上の命を救うことができる。これは、AIDS(エイズ)で亡くなる人の数、または、肺がんと乳がんで亡くなる人を合わせた数を救うことに匹敵する。われわれは、エレクトロニクス技術を通じ、こうした社会に大きな好影響をもたらすことを目指している。
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