Armは2018年5月31日(米国時間)、新しいモバイル向けCPUコア「Cortex-A76」を発表した。同社によると、Intelの最新「Core」プロセッサ(開発コード名:Skylake)の9割に相当する性能を実現できるという。
Armは2018年5月31日(米国時間)、新しいモバイル向けCPUコア「Cortex-A76」を発表した。同社によると、Intelの最新「Core」プロセッサ(開発コード名:Skylake)の9割に相当する性能を実現できるという。アナリストらはアーキテクチャの大幅な進化を高く評価しているが、Armが現在のx86ベースのノートPC市場で大きなシェアを獲得するかどうかについては、懐疑的な見方を示している。
ArmはCortex-A76とともに、新しいGPUコア「Mali-G76」とビデオプロセッサコア「Mali-V76」も発表した。これらは全て、2018年末にはハイエンドのスマートフォンSoCに搭載されることが見込まれている。IntelのSkylakeに比べると、実装面積を4分の1、消費電力を2分の1に抑えつつ、SPECint2006のベンチマークで比較した場合、性能がSkylakeの9割に相当するとしている。熱に制約のあるシステムでは、ほぼ互角の性能を実現すると主張する。
Armのフェローで、Cortex-A76のリードアーキテクトであるMike Filippo氏は「われわれはIntelとの差を埋めようとしている。今回の発表は、新たな製品ファミリーの最初のステップであり、当社は開発ロードマップにおいてこれまでで最大の前進を遂げた」と述べた。
10nmプロセスの「Cortex-A72」コアに比べると、7nmのCortex-A76は性能が35%向上したばかりでなく、消費電力は40%低下した。Armはこれまで、例年のコアのアップグレードで、通常15%〜25%、性能を高めてきた。それに比べると、今回の35%の向上は大きな進歩といえる。なお、Cortex-A72は、Intelの第5世代Coreプロセッサ(開発コード名:Broadwell)の約7割半に相当する性能を実現していた。
これらの比較は、同等の周波数で動作するCPUをベースにしたものである。ArmはIntelのチップが通常、Armのコアよりも高い周波数に対応していることを認めた。TSMCは、動作周波数が4GHzのCortex-A72のテストチップを発表しているが、それほど高速に動作するチップを設計に使おうとするSoC(System on Chip)メーカーは、さすがにほとんどない。
Armは、有線サーバとネットワーク機器向けに、Cortex-A76とは別のコアの準備も進めている。同社は、キャッシュの容量を増加してCortex-A55との「big.LITTLE」構成とすることで、スマートフォンでの優位性をノートPCにも拡大することを狙っている。
Filippo氏は「われわれは、ノートPC市場で大きなシェアを得られると見込んでいるが、アナリストの中にはそのような見方に同意しない向きもある」と述べた。
Technalysis ResearchのBob O'Donnell氏は、ArmベースのノートPCは、差異化を図りにくいと指摘した。x86システムとほぼ同じ価格であるにもかかわらず、性能面でやや劣るのだという。また、バッテリー寿命は比較的長く、大抵のモデルにはセルラーモデムが内蔵されているが、O’Donnell氏は、そのような要素が多くのユーザーの購入決定に影響を与えるとは思えないと述べた。
とはいえ、ASUS、Hewlett Packard、Lenovoは、「Windows 10」搭載のArmベースのノートPCを発表している。
小型で低消費電力のコアにフォーカスするArmは、次世代プロセス技術から受ける恩恵が、ライバルのIntelよりも多いかもしれない。Intelは、伝統的に、データレートを高速化することでプロセッサを進化させてきたが、Armは、「最新の7nmプロセスでは、16nmプロセスに比べてわずか2〜3%程度しか高速化できない」と主張する。Armのフェローでテクノロジー部門のバイスプレジデントを務めるPeter Greenhalgh氏は、「16nmプロセス以降、動作周波数の点では(微細化による)利点が全くない」と述べた。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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