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IoT時代では「あらゆるモノにARMチップが載る」ソフトバンク副社長(1/2 ページ)

ARMのプライベートイベント「ARM Tech Symposia 2016 Japan」が2016年12月2日、都内で開催された。基調講演に登壇したソフトバンク副社長の宮内謙氏は、「石炭、石油の時代を経て、これからはデータの時代である。あらゆるモノにセンサーがつき、あらゆるモノにARMベースのチップが搭載される」と述べ、IoT(モノのインターネット)時代におけるARMの役割をあらためて強調した。

» 2016年12月06日 15時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

「次の10年はIoTの時代」

 ARMの日本法人であるアームは2016年12月2日、開発者向けのプライベートイベント「ARM Tech Symposia 2016 Japan」を都内で開催した。2016年7月、ソフトバンクがARMを買収すると発表した。これを受けて、今回のイベントの基調講演では「買収完了以降もARMは変わらないこと」「買収によりARMは、開発スピードを加速できること、これまで中心的なターゲット市場であったモバイル以外にも、参入しやすくなったこと」が何度も繰り返された。さらに、ソフトバンクとARMの共通のビジョンでもある、IoT(モノのインターネット)分野への注力を一層加速させていくことも強調された。

ソフトバンク副社長兼CEOを務める宮内謙氏

 基調講演に登壇した、ソフトバンク副社長兼CEOを務める宮内謙氏は、「次の10年はIoTの時代である」と言い切る。「2007年に初代『iPhone』が発表されて以降、PCからスマートフォンへと移行するパラダイムシフトが起きた。それによって、スマートフォンがなければ生まれなかったであろう、さまざまな新しいビジネスが生まれてきた。そして今、スマートフォンからIoTという次のパラダイムシフトが起こっている」(同氏)。宮内氏は、「2018年にはIoTデバイスの数がモバイルデバイスの数を超えると予測されている。IoTデバイスは2035年までに合計1兆個に達するとみられている」と述べた。

 IoTのコンセプトは全く新しくはないが、超小型の通信チップやモジュール、プロセッサ、ネットワークなど、IoT市場が開花する環境が、今までは整っていなかったと宮内氏は述べる。同氏は「ムーアの法則は今後も進み、CPUの演算性能は今後20年間で100万倍に、ストレージについては、MRAM(磁気メモリ)やReRAM(抵抗変化型メモリ)の登場によりアクセス速度が100万倍に、モバイルネットワークの速度は5G(第5世代移動通信)などにより2.6万倍になるだろう」と語り、このようにIoTが普及する環境が整ってくるであろう今後は、大きなビジネスの可能性が目の前に広がっていると同氏は述べる。

今後20年間で、CPUの性能、ストレージのアクセス速度、モバイルネットワークの速度は上がり続けると宮内氏は述べる(クリックで拡大)

「あらゆるモノにARMチップが」

 宮内氏は「IoTはビジネスにはならないのではないか、という声をよく聞く」と続ける。同氏は「だが、1個のIoTデバイスにつき(通信費などが)10円と考えても、10兆円の規模になる」と述べ、IoTビジネスの規模がいかに巨大であるかを強調した。

 IoTをビジネスにつなげる要素として、宮内氏はデータの活用を挙げる。「石炭の時代、石油の時代を経て、これからはデータの時代になる。データをいかに活用するか。ここからビジネスモデルの大きな変革が生まれてくる。そして、全てのモノにセンサーがつき、全てのモノにARMベースのチップが搭載される。これによって、より便利で暮らしやすい毎日になると考えている」(同氏)

 ソフトバンクにおけるデータ活用例の1つとして、ソフトバンクユーザーのスマートフォンの位置情報を利用した電波環境の改善がある。宮内氏は、「位置情報を利用して人の流れを解析すると、電波がつながりにくいエリアが見えてくる」と説明する。そのエリアにスモールセルなどを設置すれば、電波環境を改善できるようになる。ソフトバンクが買収した米Sprint(スプリント)のネットワークでも同じ対策を行ったところ、電波環境が劇的に改善したと宮内氏は説明する。

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位置情報を利用して、人の流れを見ている様子(再生の速度は速くしている)

スマートフォンユーザーの位置情報を利用して電波環境を向上した。図版の赤い点は、電波がつながりにくいという事象が発生している場所。右の図では、スモールセルを設置することで、赤い点がかなり減っていることが見て取れる(クリックで拡大)

 その他、ネットワークの不具合の自動検知・自動復旧を挙げた。ソフトバンクの基地局は現在、全国に約20万基ある。これまでは、ネットワークに不具合が起きた場合、異常がある基地局に作業員が出向いて行って復旧作業を行っていた。現在は、不具合の検知と復旧をクラウドを通じて行っている。同氏によると、ネットワーク不具合のうち80%を自動復旧できるという。

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