振動発生器や振動測定器を手掛けるIMVは2019年7月17日、新しい振動ピックアップ(振動センサー)「VP-8021A」を発表した。VP-8021Aの最大の特長は、MEMS加速度センサーを採用しながら、従来の一般的な圧電式振動ピックアップの計測範囲に近い8kHz周辺まで対応しているという点だ。
振動発生器や振動測定器を手掛けるIMV*)は2019年7月17日、新しい振動ピックアップ(振動センサー)「VP-8021A」を発表。それに合わせて都内で記者説明会を開催した。VP-8021Aは、振動検知による工場設備の予知保全といった用途に向ける。
*)IMV:International Mechanical Vibration。旧社名は国際機械振動研究所
VP-8021Aの最大の特長は、MEMS加速度センサーを採用しながら、従来の一般的な圧電式振動ピックアップの計測範囲に近い8kHz周辺まで対応しているという点だ。具体的には、10Hz〜8kHz(±1dB)、8kHz〜10kHz(±3dB)である。
既存の圧電式振動ピックアップは、機構的に工業化が難しく、ほぼ“手作り”している状態だ。そのため、1個10万〜15万円、ものによっては数百万円にも上るほど高価である。IMVのMES事業本部 計測事業部 開発課/企画開発係で係長・技術研究員を務める川平孝雄氏によると、非常に高価なため工場内の重要な部分にだけ使用している状況だという。
圧電式よりも低価格なのは、MEMS加速度センサーを用いた振動ピックアップだが、こちらは一般的に計測範囲が最大約1kHzなので高周波振動を計測できない。「設備診断で重要な指標とされる軸受け異常を計測するためには、10kHz前後を計測できる必要がある。既存の一般的なMEMS加速度センサーでは、そこまで対応できない」(川平氏)
そこでIMVが用いたのが、Analog Devices(ADI)の1軸MEMS加速度センサー「ADXL1002」だ。ADXL1002は、加速度の測定範囲が±50g、ノイズ密度は25μg/√Hzと低く、リニア周波数応答範囲がDC〜11kHz(3dBポイント)と広い。
ただし、単純にこのADXL1002を用いただけでは、8kHzや10kHzを実現することは難しい。ADXL1002のスペックシートの注意点に基づいて設計したテスト基板でも、5kHz付近から、振動計測値と印加振動の比率が大きくずれてくる。VP-8021Aには、この雑音振動を抑制するIMVの独自技術が採用されていて、「これにより、10kHz付近になっても、よい周波数特性を維持できるようになっている」(川平氏)
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