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もはや単なる“メモリベンダー”ではないMicronAIやセキュリティの製品も(1/2 ページ)

Micron Technologyが2019年10月24日(米国時間)に米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催した自社イベント「Micron Insight 2019」は、Micronが単なるメモリベンダーにはとどまらない、という決意が現れたものとなった。

» 2019年11月08日 10時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

 Micron Technologyが2019年10月24日(米国時間)に米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催した自社イベント「Micron Insight 2019」は、Micronが単なるメモリベンダーにはとどまらない、という決意が現れたものとなった。

サンフランシスコの“Pier 27”で開催された「Micron Insight 2019」

「3D XPoint」では新たなブランドを検討中

 Micronは同イベントで、幾つか注目に値する発表を行っている。まずは、Intelと共同開発したメモリ技術「3D XPoint」を使った新製品、NVMe SSD「X100」である。最大転送速度は9Gバイト/s、最大読み出し速度は250万IOPS。「最も速いSSD」だとMicronは主張する。

 3D XPointについては、共同開発した相手のIntelが早くから「Optane」ブランドとして展開することを発表し、実際に製品を発売する一方で、Micronからは具体的な製品発表がなかった。なお、Micronは3D XPointを「QuantX(クアンテックス)」というブランド名で展開するとしていたが、MicronのEmerging Memory Solutionsでバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるVinod Lakhani氏によれば、QuantXのブランド名を使う計画はないという。「3D XPointを用いた製品については別のブランド名を検討している。本当はX100を、そのブランド名で発表したかったが(ブランド名の決定が)間に合わなかった」(Lakhani氏)

MicronのVinod Lakhani氏

 Lakhani氏によれば、3D XPointの開発は、Micronの研究開発センターがある米国アイダホ州ボイジー(Boise)と、Micronの子会社であるIM Flash Technologyがある米国ユタ州リーハイ(Lehi)の両方で進めるという。

 今回発表したX100はデータセンター向けのストレージだが、将来的にはメモリに近い製品も開発する予定だとLakhani氏は述べる。3D XPointをメモリ寄りとして使用する場合と、ストレージ寄りとして使用する場合は、コントローラーの設計が異なるとLakhani氏は説明する。「メモリとストレージではデータアクセスへの要求が異なるので、コントローラーを変える必要がある。X100にもMicronが独自に設計した新しいコントローラーが搭載されているが、メモリ寄りの製品でも、同様に独自設計のコントローラーが搭載されることになるだろう」(Lakhani氏)

3D XPointをNVDIMM-Pで使う?

 Lakhani氏は、NVDIMMについても言及した。Micronは現在、第2世代のNVDIMM(NVDIMM-N)を量産中だ。中でもMicronが積極的に関わっているのが、現在JEDECが仕様を策定している、Persistent Memoryや大容量DRAMに向けた「NVDIMM-P」である。NVDIMM-PはDRAMと不揮発メモリを混載したDIMMで、DDR規格を拡張し、クロックに同期しなくても信号を送ることができるのが特長だ。Lakhani氏は「NVDIMM-Pでは、同じバス上で、異なるタイミングで信号を送ることができる。これによって、3D XPointのようなメモリをDDRバスにのせられるようになる」と説明する。

 またLakhani氏は、「キオクシア(旧東芝メモリ)は、SCM(ストレージクラスメモリ)の分野でSLC(Single Level Cell)技術を用いた3Dフラッシュメモリ『XL-FLASH』のサンプル出荷を開始しているが、これに対する3D XPointのメリットは?」とする質問に対し、「NANDフラッシュとは根本的に異なる技術である3D XPointは、本質的にNANDフラッシュよりも高速だ。メディアとしての管理もNANDフラッシュよりもシンプルで、耐性もある。そのため、性能全般にわたりNANDフラッシュよりも大きな優位性があると、われわれは考えている」と述べた。ただし、当然コストは大幅に高くなる。

 Lakhani氏は、3D XPointを使った今後の製品について、DRAMやNANDフラッシュと組み合わせて製品化する可能性は大いにあると語った。同氏は「DRAM、NANDフラッシュ、3D XPoint(=SCM)の3つを持っているのはMicronだけで、これが当社の大きな競争力になっている。高速だが高価なDRAM、安価だが遅いNANDフラッシュ、それらの間に位置する3D XPoint。この3つがそろうことで、データの置き場所、転送先の選択肢が広がることになる」と強調した。

 同氏は3D XPointの市場について、「本格的な立ち上がりと普及拡大には、少し時間がかかるだろう」と述べた。「Micronにとって、3D XPointを使った製品のポートフォリオを増やすのは時間がかかる。アプリケーションを開発する側にとっても、3D XPointという新しい技術を使って何ができるのか、何のシステムに応用できるのかを考えるのに時間を要するだろう」(同氏)

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