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InGaAsを300mmウエハー上で 量子ドットレーザーで気を吐く新興AIインフラ向けなどに取り組む(1/2 ページ)

米スタートアップのAelumaが、短波長赤外(SWIR)センサーや量子ドットレーザーの分野で革新を起こそうとしている。300mmウエハーを用いたシリコンフォトニクス技術と融合し、これまでは特殊な分野でしか用いられてこなかったSWIRセンサー/量子ドットレーザーを、民生機器などにも広げようとしている。

» 2025年05月28日 11時30分 公開
[Alan PattersonEE Times]

InGaAsと300mmウエハーを融合

 米国カリフォルニア州に拠点を置くスタートアップAelumaのCEOであるJonathan Klamkin氏は、米国EE Timesの独占インタビューで「われわれは、インジウム・ガリウム・ヒ素(InGaAs)を業界で初めて300mmシリコンウエハーと融合する新技術を適用し、センサーと量子ドットレーザーの生産を加速させている。これにより、InGaAsがさまざまな新デバイスで採用されるようになるだろう」と述べている。

 またKlamkin氏は「Aelumaは数カ月以内に、米国拠点のファウンドリーとの製造パートナー提携を発表する予定だ」と述べる。同氏は米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校の教授として、10年前からInGaAs技術の開発に取り組んできたという。

Aelumaの300mmウエハープラットフォーム[クリックで拡大] 出所:Aeluma

 Klamkin氏によると、今回Aelumaが300mmウエハーでInGaAs材料のブレークスルーを成し遂げたことにより、これまで「こうした特殊な材料は、小型ウエハー上での生産に限られるため現実的ではない」とされてきたさまざまな新デバイスを、実現できるようになるという。

 「われわれはこれまで、コンシューマー市場のモバイル機器向けに短波長赤外(SWIR)を拡充することを重要目標として取り組んできたが、AIインフラ向けの量子ドットレーザーのような、他の取り組みも進めている。当社が保有する300mmの有機金属気相成長法(MOCVD法)技術は、InGaAsと関連材料をシリコン上に直接成膜できる。これを、さまざまな用途向けに異なるウエハーサイズで行い、200mmや、開発/少量生産といった用途向けの小型ウエハーにも対応することが可能だ」(Klamkin氏)

 今のところ、Aelumaの取り組みの大部分は、米国国防総省(DoD)に向けたものだという。

 Klamkin氏は「われわれが戦略的に、防衛/航空宇宙分野を最初のターゲットとしたのは、この技術の既存市場であり、迅速に勝利を獲得できると確信していたからだ。その背後では、他の市場向けの技術開発も常に進めてきた。それが今や、確実に勢いを増してきている」と述べる。

 Aelumaは現在、防衛/航空宇宙分野において、大型カメラのような機器に搭載されるSWIRチップの生産を拡大している。同社は海軍や空軍、米国防高等研究計画局(DARPA)などの国防省の組織の他、米航空宇宙局(NASA)や米国エネルギー省などの米国政府機関との間で契約を結んでいる。

 Klamkin氏は「これは、より大型のカメラや、より小さい画素の高解像度赤外線カメラなどの製造実現に向けた規模拡大である。小型の基板上であったり、ただ性能が優れているというだけでは不可能なことだ。というのも、シリコン上で製造する場合、ウエハースケールのパッケージングのように、小型の基板上では対応できない、まったく違う方法でパッケージングやインテグレーションを実行するからだ。われわれはそれを、200mm/300mm基板などで検出器を製造することで実現できる」と述べている。

 同氏は「銅の柱(Cuピラー)やプレーナ型銅インターコネクトを、古い2インチのインジウムリン(InP)基板上に作り込むのは不可能だ。単純に、古いウエハー向けのツールが存在しないからである」と指摘する。

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