窒素ドープ型ナノチューブ分子の化学合成に成功:窒素ドープを完全に制御
東京大学の研究グループは、窒素原子が埋め込まれたナノチューブ分子(窒素ドープ型ナノチューブ分子)の化学合成に初めて成功した。【訂正あり】
東京大学大学院理学系研究科の磯部寛之教授(JST ERATO磯部縮退π集積プロジェクト研究総括)らの研究グループは2020年4月、窒素原子が埋め込まれたナノチューブ分子(窒素ドープ型ナノチューブ分子)の化学合成に初めて成功したと発表した。
研究グループは、2019年に独自のナノチューブ分子化学合成法を開発していた。これまでは化学合成法にベンゼンを用いてきたが、今回はピリジンを活用することで、窒素原子の位置や数を制御しながら埋め込むことに成功した。これまでの物理的な製造方法では組成や位置、構造などを制御しながら窒素ドープを行うことはできなかったという。
窒素ドープ型ナノチューブ分子の分子構造。青色部が窒素原子。左は結晶構造を横から、右は下から、それぞれ見た図 (クリックで拡大) 出典:東京大学
合成した窒素ドープナノチューブ分子は、構成される主原子304個のうち、8個を窒素原子とした。窒素原子の含有率は2.6%である。これまで検討されてきた窒素ドープナノカーボンの窒素含有率は2〜5%であり、この範囲に収まっているという。
最先端X線構造解析法により、窒素上の孤立電子対(ローン・ペア)の存在を明確にし、理論計算による電子的寄与も明らかにした。この結果から、窒素は電子をナノチューブに注入させやすくする効果があることが分かった。窒素が電子を受け取りやすくすることで、n型半導体になりやすいという。
【訂正:2020年4月23日17:25 当初、上記の文で「論理計算による電子的寄与」と記載しておりましたが、正しくは「理論計算による電子的寄与」です。お詫びして訂正致します。】
窒素ドープ型ナノチューブ分子上の孤立電子対と、その電子状態変化 (クリックで拡大) 出典:東京大学
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