東京大学や東北大学らの共同研究グループは、有機半導体単結晶の基板界面における分子形状を0.1nmの精度で決定することに成功した。この結果、有機半導体を基板に物理吸着することで、100兆個を超える分子の形状が同じように変化することが明らかとなった。
東京大学や東北大学らの共同研究グループは2020年1月、有機半導体単結晶の基板界面における分子形状を0.1nmの精度で決定することに成功したと発表した。この結果、有機半導体を基板に物理吸着することで、100兆個を超える分子の形状が同じように変化することが明らかとなった。
今回の成果は、東京大学大学院新領域創成科学研究科、同マテリアルイノベーション研究センター、東北大学大学院理学研究科、大阪大学大学院基礎工学研究科、筑波大学大学院数理物質科学研究科、広島大学大学院理学研究科、スタンフォード大学SLAC国立加速器研究所、産業技術総合研究所 産総研・東大先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリおよび、物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)らの共同研究によるものである。
パイ共役系の化学構造を持つ有機分子は、次世代半導体材料として注目されている。印刷プロセスを用いて柔軟性のあるデバイスを作製できるからだ。研究グループでも、厚みが10nm程度の有機半導体単結晶薄膜を、大きな面積に塗布できる印刷法を開発してきた。この時のキャリア移動度は10cm2/Vsを超えるなど、実用レベルに達している。しかし、基板界面の分子形状を精密に計測することは、これまで極めて難しかったという。
共同研究グループは今回、印刷プロセスを用いて半導体のインクから有機半導体単結晶の単分子薄膜を作製した。インクと気相(気液界面)によって得られた薄膜は、インクが乾燥すると基板上に貼り付く。この薄膜に対してX線を照射しその反射や吸収を精密に測定した。これにより、有機半導体単結晶の基板界面における分子形状を0.1nmの精度で決定することに成功した。
その結果、基板に物理吸着するだけで、100兆個を超える全ての分子形状が同じように変化することが初めて分かったという。また、基板界面付近における分子形状の変化は、厚みが4nmという1分子層からなる膜だけで観測された。この膜厚を制御すれば、物理吸着による分子形状の変化も抑制されて電子状態が変化し、移動度は40%以上も向上することが明らかとなった。
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