いずれにしても、Huaweiの機器が使えなくなるというのは、BT(British Telecom)やVodafoneをはじめとする多くの通信事業者にとって大きな後退となるだろう。既存のインフラを取り換えようとすれば膨大な投資は避けられない上に、5Gの展開は恐らく2年は遅れることになる。
この点では、Huaweiの主張は確かに一理あるのだ。
だが、英国のオペレーターにはどんな選択肢があるのだろうか。Huaweiが(当然のことながら)この状況を利用していることは間違いないだろう。
Plessey、GEC-Marconi、Northern Telecomなどの旧勢力を復活させるには遅過ぎて、広く話題になっているOpen RANを採用するには早過ぎる。
Nokia、Ericsson、Samsung Electronics、NEC、ZTEなど他のインフラ機器メーカーももちろん存在しているし、その中には既に英国のオペレーターにとって主要なサプライヤーとなっている企業もある。それは同時に、「なぜHuaweiでなくてはならなかったのか」という疑問をもたらすものでもある。確かに技術、製品は優れている。だが、あえて主張したいのは、インセンティブが多少なりとも(Huawei製品の)採用に有利に働いたのではないか、ということだ。
Huaweiが英国の通信インフラの本格的なサプライヤーとなった時、契約の一部として、英国の重要な国家インフラに対するリスク軽減を目的とした「Huawei Cyber Security Evaluation Centre Oversight Board(Huaweiサイバーセキュリティ評価センター監視委員会)」が設置された。同委員会はこれまでに5つの年次報告書を発行しており、オペレーター/ユーザーに対し、Huaweiの機器の性能を低下させる可能性があるハード/ソフトの問題などを取り上げている。それらに対するHuaweiの対応も報告書に盛り込んでいる。
2019年に発行された報告書では、同社の基本的なエンジニアリングの規律に関する深刻な懸念が提起されている。報告書では、多数の“プロセスの欠陥”と数百に及ぶ“脆弱性”が強調されている。
深刻な例としては、Huaweiが「非常に複雑で管理の行き届いていない開発、構築プロセス」を示しており、「Huaweiのソフトウェアエンジニアリングにおける深刻で体系的な欠陥」を抱えている可能性があることが指摘されている。
健全な状況であるとは、言い難いようだ。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.