今回は、Huaweiのフラグシップモデル「Mate 20 Pro」「Mate 30 Pro」を取り上げる。この2機種を分解して比較すると、米国製半導体の採用が大幅に異なっていることが分かる。最新のMate 30 Proでは、極端に減っているのだ。
2019年は米中貿易摩擦の問題がエレクトロニクス業界に大きな影響を及ぼした1年であった。関連する企業では、サプライチェーンの変更や仕様の見直しなどを迫られた。影響の大小はあれども、さまざまなベンチマークが各社で行われただろう。弊社は、半導体以外の分野(半導体のみならず)でも、複数の企業のコンサルタントやセミナーなどを行っているが、2019年を通じて依頼が最も多かった内容の一つが、中国の動向であった。
現在弊社では平均すると毎週8機種程度の中国製品を入手し(大半は輸入)、分解と解析を行っている。今回は米中問題を代表するHuaweiのスマートフォンを取り上げる。
図1はちょうど1年前、2018年第4四半期に発売されたHuaweiの当時の最上位スマートフォン「Mate 20 Pro」の外観と、裏パネルを外した全体の様子、基板を取り出した様子、そしてカメラ部を取り外した際の様子である。
今なお、最先端の機能を有するハイエンド機である。2019年9月にAppleが「iPhone 11 Pro」で3眼カメラを製品化し話題になったが、中国のスマートフォンは2018年時点で3眼が採用されており、特にHuaweiはカメラの老舗ドイツのLeica(ライカ)とカメラ部を共同開発している。カメラ性能はここ数年つねに高度な出来栄えだ。
図2はMate20 Proに搭載されている半導体(一部)である。
内部は通信系、信号処理系、センサー系と大きく3つのグループで形成されている。図2の左はHuawei傘下の半導体メーカーHiSiliconのプロセッサ、「KIRIN980」のパッケージ取り出し写真と、顕微鏡で観察したチップ上の型名だ。KIRIN980は、7nmプロセスを用いた商用チップとしては世界で4番目となる(1番はAppleの「A12」、2番は同「A12X」、3番はマイニングチップ)。
KIRIN980は最先端のCPU、GPUに加えAI(人工知能)演算器とLTEモデムを1チップ化した高度なプロセッサだ。加えて電源ICやトランシーバー、Wi-Fi、AudioなどもHiSiliconはチップセットとして取りそろえ、Mate 20 Proに採用されている。一方、図2の右のように、米国製半導体も数多く使われている。米Skyworksの通信用パワーアンプや米TI製のアナログや電池充電用ICなどだ。2018年のMate 20 Proは、いわば“米中合作”だったのである。
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