D-Wave Systemsが、同社の量子クラウドサービス「Leap 2」を無償で提供するプロジェクトには、180以上の申し込みがあり、現在も増えているという。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がいまだに収束する気配を見せない中、治療薬やワクチンといった医薬品の開発だけでなく、日常生活においてできる限り感染を防止するための取り組みが世界各国で進められている。これらの取り組みを加速すべく、通常は有償で提供するシステムやツールを条件付きや期間限定で無償提供する企業も増えている。
量子コンピューティングシステムを手掛けるカナダD-Wave Systems(以下、D-Wave)も、そうした企業の一つだ。同社は2020年4月に、量子クラウドサービス「Leap 2」を無償で提供するプロジェクトを発表した。Leapサービスへのアクセスが可能な北米、欧州、アジアの35カ国を対象とし、COVID-19関連の取り組みであれば、商業契約レベルのアクセスを無制限で利用できるようになるというものだ。
その発表から約3カ月が経過したので、D-Waveに現状を尋ねたところ、現在180以上の企業/組織/個人が、Leap 2への無償アクセスサービスを利用しているという。今後も、1日当たり1〜2件のペースで申し込みがあると見ている。
同社はCOVID-19の対策を検討、開発する際に量子コンピュータが貢献できる分野として、診断のためのMRI(磁気共鳴画像装置)画像分析、病床のレイアウトや医療スタッフの配置の最適化、創薬、COVID-19の流行モデル作成、物資の製造や配送の自動化などを挙げた。
D-WaveのCEOであるAlan Baratz氏は同社が2020年3月31日に出したリリースで、「ハイブリッド量子コンピューティング*)は、全ての問題を解決できるわけではない。ただ、われわれは、世界各国の組織および個人が協力あるいは協業して迅速にソリューションを構築すべく、強力なリソースを提供して支援するべきだと考えている」と述べている。
*)Leap 2は、既存のコンピュータと量子コンピュータを組み合わせる「ハイブリッドシステム」となっている。
なおD-WaveとNECは2020年6月18日、量子コンピューティングの領域で協業すると発表した。NECはD-Waveに1000万米ドルを投資する他、ハイブリッドシステムの技術開発、量子コンピュータを用いたアプリケーション開発、関連するソフトウェア開発などを共同で進める。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.