スーパーコンピュータの性能ランキング「TOP500」が2020年6月22日(ドイツ時間)に発表され、理化学研究所と富士通が共同開発した「富岳」が世界1位を獲得した。日本のスパコンが1位となるのは2011年11月に先代の「京」が獲得して以来、9年ぶり。富岳は同日、「HPCG」「HPL-AI」「Graph500」でもそれぞれ1位を獲得し、世界初の同時4冠を達成した。
スーパーコンピュータの性能ランキング「TOP500」が2020年6月22日(ドイツ時間)に発表され、理化学研究所と富士通が共同開発した「富岳」が世界1位を獲得した。日本のスパコンが1位となるのは2011年11月に先代の「京」が獲得して以来、9年ぶり。富岳は同日、「HPCG」「HPL-AI」「Graph500」でもそれぞれ1位を獲得し、世界初の同時4冠を達成した。
TOP500は、LINPACKの実行性能を指標として世界で最も高速なコンピュータシステムの上位500位までを定期的にランク付けし、評価するプロジェクト。富岳のシステムは、富岳の396筐体(15万2064ノード、全体の約95.6%)の構成で、LINPACK性能は415.53PFLOPS、実行効率は80.87%だった。2位は米国の「Summit」で、測定結果は148.6PFLOPS。富岳は第2位と約2.8倍の性能差をつけた形となっている。
HPCGは、産業利用など実際のアプリケーションでよく用いられる共役勾配法の処理速度の国際的なランキング。測定には富岳の360筐体(13万8240ノード、全体の約87%)を用い、1万3400TFLOPSを達成した。こちらも2位は米国のSummitで、測定結果は2925.75TFLOPS。富岳は2位と約4.6倍の性能差を発揮している。
HPL-AIは、TOP500やHPCGなどと異なり、人工知能計算などで活用されている単精度や半精度演算器などの能力も加味したスパコンの計算性能を評価する指標として、2019年11月に制定された新たなベンチマークだ。測定には、富岳の330筐体(12万6720ノード、全体の約79.7%)を用い、1.421EFLOPSを記録。理研と富士通は、「この記録は、世界で初めてHPL系ベンチマークで1エクサを達成した歴史的な快挙だ。富岳の高い性能を証明するとともに、人工知能計算やビッグデータ解析の研究基盤として、Society5.0社会の推進に大いに貢献し得ることを示している」としている。
Graph500は、大規模グラフ解析に関するスーパーコンピュータの国際的な性能ランキング。測定では、富岳の9万2160ノード(全体の約58%)を用いて、約1.1兆個の頂点と17.6兆個の枝から構成される超大規模グラフに対する幅優先探索問題を平均0.25秒で解くことに成功。Graph500のスコアは、7万980GTEPSを記録した。2位は中国の「Sunway TaihuLight」で、測定結果は2万3756GTEPS。富岳が第2位と約3倍の性能差を見せた形となっている。
なお、富岳は2019年11月にも、スパコンの消費電力性能を示すランキング「Green500」で世界1位を獲得している。
理研計算科学研究センターのセンター長、松岡聡氏は、「富岳はSociety5.0に代表される、国民の関心事の高い種々のアプリケーションで高い性能が出るように開発したが、その結果として、全ての主要なスパコンの諸元で突出して世界最高性能である事を示す事ができた。今後、富岳は、スパコンとしての利用とともに、開発された富岳のITテクノロジーが世界をリードする形で広く普及し、新型コロナウイルス感染症に代表される多くの困難な社会問題を解決していくだろう」と述べている。
富岳は、「Arm v8」命令セットアーキテクチャをスパコン向けに拡張した「SVE(Scalable Vector Extension)」を採用した高性能CPU「A64FX」15万個以上を、高速ネットワーク「TofuインターコネクトD」で接続する超大規模システムだ。ArmのIPプロダクトグループ プレジデント、Rene Haas氏は、「世界最速のスーパーコンピュータに採用されたことは、Armプラットフォームを支えるイノベーションと勢いがインフラストラクチャ全般ひいてはHPC分野に大きな影響をもたらしていることの証であり、Armエコシステム全体で祝福すべき画期的な出来事だ」とコメントしている。
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