Kneronは、同社のニューラルプロセッシングユニット(NPU)IPの最新版を搭載するAI SoC(System on Chip)「KL720」を発表した。同SoCは、モニター付き玄関ベルやロボット掃除機などの低消費電力のエッジデバイスやスマートホームデバイス向けだが、「トースターから自動運転車まで、あらゆるものに対応できる」という。
米国サンディエゴと台湾に拠点を置くAI(人工知能)チップとIP(Intellectual Property)の新興企業であるKneronは、同社のニューラルプロセッシングユニット(NPU)IPの最新版を搭載するAI SoC(System on Chip)「KL720」を発表した。AI処理用にCadence Design Systems(以下、Cadence)のDSP、システム制御用にArmの「Cortex M4」コアを搭載する。同SoCは、モニター付き玄関ベルやロボット掃除機などの低消費電力のエッジデバイスやスマートホームデバイス向けだが、「トースターから自動運転車まで、あらゆるものに対応できる」という。
Kneronは、「この第2世代チップは、エネルギー効率でIntelの『Movidius』とGoogleの『Coral Edge TPU』を上回る」と主張している。KL720のNPUブロックは、今回追加されたDSPとCortex M4コアを含むSoC全体で0.9TOPS/Wの電力効率と1.4TOPSの演算性能を実現したという。これは、4K画像やフルHD(1080p)ビデオの処理にも十分な性能だ。Kneronが2019年5月にリリースした前世代の「KL520」(電力効率0.6TOPS/W、演算性能0.3TOPS)から大きく向上した。
前世代チップが画像処理専用であったのに対し、KL720は音声処理にも適している。音声制御インタフェースの普及に伴って、エッジデバイスでのAI処理の需要が高まっている。エッジ処理は、クラウドで処理するよりも高速かつ安価で、ユーザーのプライバシーが守られるためだ。Kneronによると、KL720は、特定のウェイクワード(音声認識機能を起動するための音声コマンド)のみを認識する競合チップをはるかに上回る、「辞書1冊分の単語」を認識可能な処理能力を備えているという。
Kneronは少なくとも2020年1月から、顧客向けにKL720のプロトタイプのデモを実施している。同社は2015年に創業し、顔認識を含むユースケース向けのAIモデルの開発を開始した。AIチップの他、NPU IPのライセンスも提供しており、KL720に搭載されているNPUは既に、CadenceのDSP IP 「Tensilica Vision P6」やSynopsysの「ARC」プロセッサIPとの統合が完了しているという。
NPUが画像と音声の両方に対応するための鍵は、リコンフィギュラブルな設計にある。
KneronのCEO(最高経営責任者)を務めるAlbert Liu氏は、EE Timesが以前に行ったインタビューで、「主流となるAIフレームワークと畳み込みニューラルネットワーク(CNN)モデルを基本的なビルディングブロックに分解して、必要なアプリケーションやAIフレームワークに基づいて再構成することで、関連するCNNモデルに適応した、高速処理の可能なソリューションを実現した」と語っていた。
「例えば、代表的なニューラルネットワークであるResNetとLSTNは、一方が画像認識向けで他方が音声認識向けであるにもかかわらず、共通のビルディングブロックを持っている」とLiu氏は説明した。「他社では、これらのニューラルネットワークごとに個別のソリューションでサポートする必要があるかもしれないが、Kneronでは、再構成可能なAIエンジンにおいて共通のビルディングブロックを組み合わせるので、ResNetやLSTMといった異なるニューラルネットワークモデルを、リアルタイムでサポートできる」(同氏)
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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