Eta Computeは、同社の超低消費電力AI(人工知能)チップ「ECM3532」向けに、組み込みAI開発を一元化できるコンパイラを発表し、ツールチェーンの成長を拡大させている。
Eta Computeは、同社の超低消費電力AI(人工知能)チップ「ECM3532」向けに、組み込みAI開発を一元化できるコンパイラを発表し、ツールチェーンの成長を拡大させている。
同社は、Edge Impulseと協業関係を構築しており、サイズがコイン1枚ほどのセンサーボード評価キットと組み合わせることによって、次の成熟度レベルへと進んでいくだろう。Eta Computeは、2020年2月にECM3532を発表したが、その後現在まで、デュアルコアMCUやDSP設計向けのコードを手作業で最適化することにより、顧客設計をサポートしてきた。
ECM3532は、Arm「Cortex-M3」コアとNXP Semiconductorsの「CoolFlux DSP」コアを使用してAI処理を行うデュアルコアSoCである。Eta Computeは、特許取得済みの連続電圧および周波数スケーリング(CVFS:Continuous Voltage and Frequency Scaling)技術を適用することによって、両コアの電圧とクロック周波数を調整し、IoT(モノのインターネット)デバイスの変化するニーズに対応できるとしている。電池式設計のセンサーフュージョンアプリケーションをターゲットとして、100μWの電力バジェットで、常時オンの画像処理アプリケーションを実現することができる。
同社によると、最近発表したばかりの超小型評価ボードは、スマートセンサーや、組み込みマイクロフォン、温度/圧力センサー、加速度計、ジャイロスコープ、Bluetooth接続などの開発を簡素化することができるという。寸法は3.5mm角で、コインセル電池を使用して数カ月間動作させることが可能だ。
Eta Computeは2020年5月に、Edge Impulseとの協業を発表した。Eta Computeのチップと評価ボードを、Edge Impulseのエンドツーエンド機械学習(ML)開発およびMLOps(機械学習用のDevOps)プラットフォームがサポートする形だ。Edge Impulseのツールは、そのほとんどがAI対応IoTノード向けデータセットの仮想化や管理に対応できるという。
Edge ImpulseのCEO(最高経営責任者)を務めるZach Shelby氏は、以前に行われたEE Timesのインタビューの中で、「組み込み開発メーカーとしては、Eta Computeのようなメーカーの部品を使用することは非常に難しいかもしれない。そして機械学習を実行するとなると、さらに困難を極めるだろう。われわれは、そうした課題を取り除こうと、当社製ボード上で実行可能な優れたドラッグアンドドロップバイナリを用意している。直ちにセンサーデータの収集を開始し、当社のシステムに送信することができる。機械学習アルゴリズムを導入すべき時が来たら、Eta Computeのターゲット向けにライブラリを構築することが可能な導入オプションを用意することにより、デバイス上で即座に動作させることが可能だ」と述べている。
Eta Computeのプロダクトマーケティング部門担当シニアディレクターを務めるSemir Haddad氏は、「当社の『TENSAI Flow』ツールチェーンは、エッジAI開発メーカーが現在直面しているさまざまな問題に対応できる」と述べる。
「まず1つ目の問題として、ネットワークの向上を目指す上で、実在するセンサーとどのように連動させてデータを収集すればよいのか、という点が挙げられる。2つ目は、ネットワークをハードウェアに対してどう最適化するかということだ。既存のニューラルネットワークのフレームワークやツールは、CPU上での動作をサポートしてはいるが、実際には(われわれのハードウェアに)最適化されていない。3つ目は、実際の組み込みシステム開発で使用できるファームウェアを生成する必要があることだ。4つ目の問題は、デバイスのプロビジョニングやクラウドへの接続など、エッジからクラウドへの完全なソリューションだ。これらが、われわれがTENSAI Flowで取り組んでいる4つの課題のポイントだ」(Haddad氏)
Eta Computeは2015年に設立したスタートアップだ。これまでに1900万米ドルを調達していて、米国とインドに35人の従業員がいる。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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