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加速するニューロチップ市場、新興企業が6億円調達低遅延、低消費電力で期待

ニューロモーフィックコンピューティングを手掛けるオランダの新興企業Innatera Nanosystems(以下、Innatera)が、シードファンディングラウンドにおいて500万ユーロ(約6億2000万円)の資金を調達したという。

» 2020年11月27日 13時30分 公開
[Sally Ward-FoxtonEE Times]

 ニューロモーフィックコンピューティングを手掛けるオランダの新興企業Innatera Nanosystems(以下、Innatera)が、シードファンディングラウンドにおいて500万ユーロ(約6億2000万円)の資金を調達したという。

 Innateraは、オランダのDelft University of Technologyからスピンアウトした企業だ。スパイキングニューラルネットワークを実行することが可能なアナログチップの開発に取り組んでいる。スパイキングニューラルネットワークとは、脳の機能の仕方から着想を得たニューロモーフィックコンピューティングにおいて使われている、ニューラルネットワークの一種である。そのメリットとしては、他のニューロモーフィックコンピューティングと同様に、消費電力量やレイテンシを劇的に改善できる点が挙げられる。同社が開発したチップは、既存のデジタル処理と比べて、センサーデータ処理を100倍に高速化できる他、エネルギー消費量を500分の1に低減することも可能だという。

 同社のCEO(最高経営責任者)を務めるSumeet Kumar氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「われわれは、エンド端末でのセンサーをターゲットとしている。処理が常時オンで、厳しい電力バジェットを要求されるアプリケーションだ」と述べている。

Innateraの幹部。左からCSO(最高戦略責任者)のAmir Zjajo氏、CEOのSumeet Kumar氏、チーフアドバイザーのRene van Leuken氏 画像:Innatera Nanosystems

 同氏は、「現在、ニューロモーフィックを手掛けているさまざまな企業が、カメラやビジョンアプリケーションをターゲットとしているが、ニューロモーフィックコンピューティングの適用範囲は、センシングやマイクロフォン、レーダー、LiDAR、超音波など、非常に幅広い。センシングは一般的に、高い付加価値を実現する可能性を秘めている。われわれはこのような多くの分野において、既存品をはるかに超える性能を備えたソリューションを用いながら、組みを進めている」と述べる。

 Innateraがターゲットに定めているアプリケーションとしては、HMI(Human Machine Interface)のインテリジェントスピーチ処理や、ウェアラブルデバイスのバイタルサイン監視、レーダーやLiDARのターゲット認識、産業用および車載用装置の故障検出などが挙げられるという。

Innateraのチップのイメージ 画像:Innatera

 Innateraの技術は、ニューロモーフィックアルゴリズムとハードウェアの両方をサポート可能だ。同社のアナログチップは、センサーデータの空間的/時間的パターンを処理することができる。

 Kumar氏は、「Innateraのハードウェア構成は、ニューロモーフィックスパイキングニューラルネットワークを高い忠実性で実行することが可能だ。当社のチップは、アナログミックスドシグナルのスパイキングニューロンおよびシナプスによるプログラム可能なアレイである。このアーキテクチャは、これらのコンポーネントのきめ細かい時間的処理機能を、非常に柔軟に活用することができる。同アーキテクチャ自体は本質的にスパース化されており、イベント駆動型かつ超並列型でもある。

 同氏は、「Innateraのアナログハードウェアは、許容損失を低減する上で重要な鍵となるが、専用のスパイキングニューラルネットワークを開発する必要がある。このようなネットワークは、主流派のニューラルネットワークアルゴリズムから派生させることはできないが、通常、既存品と比べるとはるかに規模が小さい」と説明する。

 「例えば、当社は最近、ある顧客企業と共同開発を進めているが、その中で当社のスパイキングニューラルネットワークは、最先端のアナログアクセラレーターに実装されている既存のニューラルネットワークと比べると、レイテンシを40倍に低減し、推論当たりのエネルギーを49倍に高めるなど、はるかに優れた性能を実現している」と述べている。

 Innateraのニューロモーフィックチップのサンプル出荷は、まずは一部の顧客に向けて2021年後半に開始される予定だ。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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