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Teslaの考え方は自動車メーカーというよりソフトウェア企業eMMCの不具合でリコール(1/2 ページ)

eMMC対応のNAND型フラッシュメモリのウェアアウトによるTesla(テスラ)のリコールは、同社が、自動車メーカーというよりもソフトウェア企業のような考え方を持っていることの表れかもしれない。

» 2021年02月12日 13時00分 公開
[Gary HilsonEE Times]

 eMMC対応のNAND型フラッシュメモリのウェアアウトによるTesla(テスラ)のリコールは、同社が、自動車メーカーというよりもソフトウェア企業のような考え方を持っていることの表れかもしれない。

 Teslaは、2012年〜2018年モデルの高級セダン「Model S」と、2016年〜2018年モデルのSUV「Model X」の大半に8GBのeMMC NANDフラッシュを採用していた。今回のリコールは同デバイスの不具合が引き起こしたものである。既に2019年にMotherboardが報じていたように、リコールの対象となったモデルに搭載されたメモリデバイスでは、書き込みを繰り返すことで劣化が生じ、メモリが機能しなくなるウェアアウトにより、MCU(メディアコントロールユニット)全体が動作しなくなったという。また、現在では連邦政府が搭載を義務付けているバックアップカメラへのアクセスが断たれる上に、タッチスクリーン経由で行われるあらゆる機能(HVACコントロールやウィンカーにまで)に影響をもたらすようだ。

 NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)は1年前にTeslaに対してリコールを要請したが、Teslaはソフトウェアのアップデートによってその不具合を解消することを望んだ。だが、この取り組みは失敗に終わった。Teslaは2021年2月、リコールを実施することに最終的に同意した。

 米デューク大学の電気およびコンピュータ工学部で教授を務めるMissy Cummings氏は、米国EE Timesとのインタビューの中で、Teslaのリコールを「計画的陳腐化*)である」と指摘した。一方、ある業界観測筋は、Teslaの大型ディスプレイのプログラマーがフラッシュメモリにウェアアウトの問題があることを知らなかった可能性があると指摘した。

*)計画的陳腐化:製品寿命を意図的に短縮すること。

NANDフラッシュのウェアアウト

 NANDフラッシュは過去10年で、その耐久性、信頼性、寿命を改善するために、多くのイノベーションが行われてきた。NANDフラッシュメモリ、コントローラー、インタフェースを1パッケージに統合したeMMCはその一例だ。

Objective AnalysisのJim Handy氏

 Objective Analysisの主席アナリストであるJim Handy氏は「あらゆるフラッシュメモリはウェアアウトするが、それはどの製品のデータシートでも明記されている」と述べた。半導体メーカーは、データシートに耐久性評価が記載されていることをTeslaに忠告したはずだ。Handy氏は「耐久性評価は並外れて控えめになる傾向がある。ウェアアウトについて、実際の100分の1の値を記載しているケースすらある(=本当はその100倍は耐久性があるという意味)」と続けた。

 同氏は、問題のeMMCを選んだTeslaのハードウェアエンジニアらはNANDフラッシュの評価を理解していただろうが、エンジニアとプログラマーの間で、ウェアアウトに関して何らかのコミュニケーション不足があったのだろうと推測した。

 自動車業界では、メモリチップなどの部品の耐久性は、車両が使われるであろう期間よりも長い、10年以上になるべきだという一般的な経験則がある。今回、Teslaでリコール対象となったクルマの一部が2012年モデルであったことを考えると、問題が起きたディスプレイ周りで使われていたeMMCは“10年もの”だったのではないかと推測できる。

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