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ミリ波で周辺の機器を無線充電、米新興企業が開発24GHz帯で他規格との干渉なし(1/2 ページ)

ワイヤレス電力伝送は、半導体業界の中で常に注目を集めているトピックの1つだ。今回、米国カリフォルニア工科大学(CALTECH)からスピンオフして設立された新興企業GuRu Wirelessが、ワイヤレス電力伝送向けのシステムを開発したと発表した。

» 2021年03月11日 14時15分 公開

ミリ波で周辺のデバイスをワイヤレス充電

 ワイヤレス電力伝送は、半導体業界の中で常に注目を集めているトピックの1つだ。今回、米国カリフォルニア工科大学(CALTECH)からスピンオフして設立された新興企業GuRu Wirelessが、ワイヤレス電力伝送向けのシステムを開発したと発表した。

 同技術は、ミリ波(mmWave)を利用したOTA(Over The Air)による電力伝送が可能だという。ミリ波は、5G(第5世代移動通信)技術でも使われている周波数である。GuRu Wirelessの共同創設者であり、CEO(最高経営責任者)を務めるFlorian Bohn氏は、米国EE Timesのインタビューに応じ、実質的に数メートルの範囲内に存在するあらゆるガジェットを充電できるワイヤレス技術を、どのようにして実現するに至ったのかを語った。この技術は、電力伝送の小型化と効率化を大きく進展させることによって実現したという。

 Bohn氏は、「ミリ波周波数を使った理由は、A点からB点までの電力伝送を空中で効率的に実現できるからだ。究極的には、物理法則を打ち負かすことはできないため、電力伝送は回折によって制限されることになる」と述べる。

 同氏は、「例えば、A点からB点まで24GHzで電力を伝送したい場合、その波長は1.25cmとなる。これはつまり、約1.25cmという小さい面積を選択して、必要な電力を効率的にそこまで伝送できるということだ。一方、Wi-Fi向けなどで使われている2.4GHzでは、波長が10倍も大きいため、それを使うとカバレッジエリアや到達可能な範囲、効率などが制限されることになる」と付け加えた。

 電力を無線伝送するというアイデアは、決して新しいものではない。最初に考え出したのは、19世紀中期から20世紀中期の電気技師/発明家であるNikola Tesla(二コラ・テスラ)である。それ以来長年にわたり、さまざまな用途向けに数多くの技術が開発されてきた。Bohn氏は、「GuRu Wirelessが高効率の設計を実現することができたのは、当社のミリ波技術が、制御された安全な方法で電力を伝送することが可能だからだ」と主張する。

 IoT(モノのインターネット)デバイスの台頭によって、電力の必要性が高まっていることから、特に設計分野の関係者たちは、現在も課題に直面している。ワイヤレス電力伝送は、電気自動車市場やモバイルエレクトロニクス機器市場の他、特にIoT市場において最も議論されているトピックの1つである。ワイヤレス設計手法は、既に広く知られているが、OTAワイヤレスパワートランスミッション向けのトランスミッタの設計や、その配置方法、効率性の最大化、システム検証などに関しては、特定の技術が必要だったり、数値シミュレーションなどの高度なツールを使用したりする必要があるなど、新たに複雑な課題が提示されている。

 数メートルの距離を超えても高い信頼性で動作可能なワイヤレス電力伝送システムを設計するには、ノウハウが必要である。例えば、コイルアンテナや回路などの電磁波や熱特性を正確に予測するための方法や、システム全体の動作/管理を担う論理制御回路を設計するための方法などが挙げられる。

従来の2.4GHz帯向けモジュールと、GuRu Wirelessのモジュール(画像左下)。大きさが全く違うことが分かる(クリックで拡大)

 GuRu Wirelessの拡張可能なワイヤレスパワーモジュールは送受信アンテナが搭載されていて、統合されたミリ波チップによって電力が供給される。タイル状に配置できるモジュール/チップはカスタマイズ可能で、高いコスト効率を持つ小型ソリューションを実現できる。

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