8インチ(200mm)ウエハーのサプライチェーンは、控えめに言っても、かなり厳しい状況にある。これは、決して新しい問題ではない。台湾の市場調査会社TrendForceが2020年11月に発表したプレスリリースでは、「8インチウエハーの生産能力に関しては、2019年後半から深刻な不足状態が続いている」と述べている。
8インチ(200mm)ウエハーのサプライチェーンは、控えめに言っても、かなり厳しい状況にある。
これは、決して新しい問題ではない。台湾の市場調査会社TrendForceが2020年11月に発表したプレスリリースでは、「8インチウエハーの生産能力に関しては、2019年後半から深刻な不足状態が続いている」と述べている。
そして、これに追い打ちをかけたのが、2021年3月にルネサス エレクトロニクス那珂工場で発生した火災だ。同工場は、さまざまな自動車メーカーに製品を供給していたため、問題はさらに深刻化していく。
こうした問題が発生した背景には、複数の要因が絡み合っている。しかし、特に大きな悪化要因の一つとなったのは、言うまでもなく新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックだ。パンデミックにより、ヘッドフォンやPC、テレビ、モニター、携帯電話機などのさまざまな種類の製品に対する需要が増大した。
自動車もこの中に含まれるが、同市場は2021年中に、パンデミックによるダメージから回復し始めるのではないかと期待されている。さまざまな製品が、多彩な機能を1つのSoC(System on Chip)に統合しようとしている中で、多くの製品は通常、1つ以上のミックスドシグナルチップを備えたデジタルICを搭載している。このような製品の対応可能な用途としては、PMIC(パワーマネジメントIC)やCMOSイメージセンサー、指紋認証センサー、自動車のモーター/シャシー制御、ディスプレイドライバーIC、サブギガヘルツの無線通信チップなどが挙げられる。これらは通常、180nmや350nmプロセス技術を適用し、8インチウエハーで製造する。
つまり、このようなミックスドシグナルチップやパワーデバイス向けの需要が増加し続けていることが、8インチウエハーの生産能力が不足する主な要因となっているのだ。
8インチウエハーの供給が限界点に達していることを受け、ファウンドリーが生産能力を強化していく可能性があると考えられる。ファウンドリーは、垂直統合型デバイスメーカー(IDM:Integrated Device Manufacturer)の8インチウエハー製造ラインや設備を買収しようとしているようだ。それを示す最近の一例として、台湾のUMCが、東芝の半導体製造子会社であるジャパンセミコンダクターの8インチ製造ラインを買収すべく話し合いを進めているとの報道がある(参考:Digitimes)。
しかし、既出のTrendForceのレポートにもあるように、2019年後半から始まった深刻な半導体不足の要因として考えられるのは、8インチの半導体製造装置を現在も引き続き製造することが可能なサプライヤーがほとんど存在しないために、その半導体製造装置の価格が跳ね上がってしまったという点だ(参考:Semiconductor Engineering)。
さらに、8インチウエハーの価格は、12インチウエハーよりも比較的低いため、ファウンドリーは通常、8インチ生産能力を拡大するのはコスト効率が悪いと考えるようだ。このため、一部のファウンドリーが顧客に対して8インチウエハーの価格をつり上げるという、連鎖反応が生じている。
別の言い方をすると、8インチウエハーをめぐる状況は、「サプライチェーンの供給を乱している」というより、「サプライチェーンの供給不足を特徴付けている」ということではないだろうか。
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