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» 2021年07月20日 17時00分 公開

半導体市場、2024年には過剰供給に陥るリスクも車載では当面不足が続くが(1/2 ページ)

TSMCのチェアマンであるMark Liu氏は、米放送局CBSのジャーナリストであるLeslie Stahl氏の取材に対し、「世界的な半導体不足は、2022年も続くだろう」と述べた。Liu氏のこのコメントから、「需要に対応すべく新たな生産能力を急速に拡大させているという現在の状況は、半導体価格の上昇や、最終的に過剰供給などを発生させる可能性がある」という問題が提起されている。

[Alan Patterson,EE Times]

過剰供給の懸念も

 TSMCのチェアマンであるMark Liu氏は、米放送局CBSのジャーナリストであるLeslie Stahl氏の取材に対し、「世界的な半導体不足は、2022年も続くだろう」と述べた。Liu氏のこのコメントから、「需要に対応すべく新たな生産能力を急速に拡大させているという現在の状況は、半導体価格の上昇や、最終的に過剰供給などを発生させる可能性がある」という問題が提起されている。

 半導体不足の発生を受け、過剰にもみえる生産能力の拡大計画を進めているのが、中国と米国だ。いずれも、「経済成長を実現する上で、半導体は非常に重要である」との認識に基づき、国内に統合的な半導体サプライチェーンを構築するためのプロジェクトを始動させている。

 米国EE Timesがインタビューした業界アナリストたちは、「最悪のシナリオとして、2023年に半導体不足が終息した後、2024年には過剰生産能力に陥るのではないかとみられている」と述べている。

 VLSI ResearchのCEOであるDan Hutcheson氏は、「どれくらいの数のギガファブ(巨大工場)が建設されるかにもよるが、2024年には過剰生産に陥ると予測される。各国政府は、ここ数年にわたって半導体業界が信念として掲げてきた『利益最大化』について、無頓着な傾向にある」と指摘する。

 またHutchesons氏は、「政府からの資金提供を受けた企業にとって、利益は大した問題ではなくなる。市場シェアの獲得だけを目指せばよいからだ。この点については、特に中国で問題になるだろう。また、市場力学ではなく政治が、生産能力の拡大に関する意思決定をけん引しているという傾向もあり、これが供給過剰を引き起こす要因となっている。数十年前にさかのぼると、一連の好不況の循環が起こっていることが分かる」と指摘する。

 英国・ロンドンに拠点を置くArete Researchでシニアアナリストを務めるBrett Simpson氏は、「7nmプロセス以降の最先端の半導体チップに対する需要は、この先数年間、非常に厳しい状況が続くだろう」と述べる。

 同氏によると、半導体不足の背景にある主要な要因として挙げられるのが、主に12/16nmプロセスを適用したモデムチップをスマートフォンに使用する4G(第4世代移動通信)から、7nm以降のプロセスを使う5G(第5世代移動通信)への移行だという。また、高性能コンピューティングは今後も指数関数的に増大し、自動車市場では初めて最先端チップが使われるようになる見込みだ。短期的には、例えば自動車メーカーのように、レガシープロセスを適用した8インチウエハーで顧客向け半導体チップを製造している企業は、需要への対応が非常に難しくなるとみられる。

 Simpson氏は、「最後発の分野では、明らかに機器が不足している上に、生産能力不足を解決するために生産能力を拡大するとなると、膨大なコストが生じる。この問題は、8インチから12インチへの移行が完了すれば、ほとんど解決することができるだろう」と述べる。

 また同氏は、「2022年前半には、パワーマネジメントIC(PMIC)やディスプレイドライバ、コンタクトイメージセンサーなどの“移行が完了した”半導体チップが、フル生産の段階に入り、さらに12インチ製造ラインで量産を加速していくだろう」と述べている。

 Simpson氏によると、過剰供給によって危険性が生じるとの見方はしていないという。

2023〜2024年に稼働を開始する工場にはリスク発生も

 「ただし、補助金の程度にもよる。米国の巨大工場が本格的に稼働するのは今後5年間くらいのことになるだろう。中国がEUV(極端紫外線)リソグラフィーを導入した工場を建設する可能性も低い。このため最先端の半導体に関しては、これらの点が重要な危険要因になるとは考えにくい。12nmや16nm、22nm〜28nmなどのプロセス技術に関しては、中国だけでなく、GLOBALFOUNDRIESやUMCなども生産能力を拡大することができるため、長期的に過剰供給のリスクが生じる可能性がある」(Simpson氏)

 米国の投資会社であるWedbush Securitiesでシニアバイスプレジデントを務めるMatt Bryson氏は、「新たな生産能力を生み出すべく膨大な資金が投じられることにより、特に2023〜2024年の間に製造を開始する工場に関しては、リスクが生じる見込みだ」と指摘する。

 一方で同氏は「(電子機器における)半導体の搭載量は今後も増加していくとみられるため、避けることができない長いダウンサイクルを緩和できるのではないか」との見解も示した。

 Simpson氏は、「汎用部品に関しては、過剰供給が生じる可能性があるが、それほど心配するようなことではない。需要の予測は難しいが、主要なエンドマーケット全体の半導体コンテンツが拡大すれば、業界にとっては力強い成長傾向となるだろう」と述べる。

 「例えば、エンジン車が電気自動車に、サーバ向けCPUがアクセラレーターチップに置き換わったり、5Gが4Gに取って代わるなど、さまざまな製品や技術の移行が進みつつあるが、これらは全て、半導体の搭載量増加の背景にある要素だといえる。半導体はこの先の10年間、過去10年間と比べて高い成長を遂げていくだろう」(Simpson氏)

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