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EV向け固体電池など開発へ、「3D電極技術」の新興企業エネルギー密度、電力、寿命が向上(2/2 ページ)

» 2022年02月28日 10時30分 公開
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Addionicsの3D電極技術

 従来、電池の電極には高密度の金属箔が用いられ、その上に活物質を積層する2D構造になっていた。だが、そのような“30年物”の2次元構造は既に能力の限界に達しており、増大する電化需要に対応するために求められる主要な性能パラメータを実現するのが難しくなっている。

 Biton氏は「電極を、多孔質構造を持つ3D形状にすると、高負荷時に活物質が全般にわたって統合され、電池の内部抵抗が軽減される。この新しい電池セル構造では、表面積と電池の電極特性が向上する。それにより、エネルギー密度や伝導性が高められる他、発熱が減り、材料の膨張も抑えられる」と述べた。

 さらにBiton氏は「その結果、駆動距離、充電時間、安全性、電池寿命の観点で、既存または新興のあらゆる電池ケミストリーに多大な利点がもたらされる。それらの恩恵は全て、電池のサイズや部品を実質的に変えることなく同時に発生する」と述べた。

 Addionicsの特許取得済みの電極製造プロセスは、製造コストを大幅に低減するという。このプロセスは、既存の電池製造施設や組み立てラインとの互換性を持つ。さらに、Addionics独自のAI(人工知能)アルゴリズムは、アプリケーションに応じて電極設計を最適化することで、電池の開発時間を早める。

 EV業界は、航続距離の伸長や充電時間の短縮、電池の安全性の向上を実現しながら、内燃エンジンに競合する価格のEVを開発することに注力している。電池製造の規模拡大が進むにつれ、価格は下がり、業界は堅実性を一層高めることができるだろう。Biton氏は「電池市場は、技術とスケーリングという2点に注力する必要がある。次の段階の変化を生み出すには、ケミストリーを超えた焦点が求められる。電池の物理を改善する必要がある他、AIを使って技術面の課題やスケーリングに取り組まなければならない」と述べた。

安全性の向上、環境負荷や製造コスト削減も

 もう1つの安全性の課題として、電池の機械的な安定性と統一性を改善することが挙げられる。それにより、過熱や短絡を確実に避けられるようになる。Biton氏は「EVの電池の発火はまれだが、EVの導入や消費者の信頼には大きな支障が出る。電池セルの設計を変えることで、既存のアプローチより安全性を強化するためのより効果的なルートがもたらされる」と述べた。

 Biton氏は「われわれの3D電極設計では、放熱性や熱均一性、機械的安定性を高めることで、電池の寿命を向上し、爆発や発火につながる現象のリスクを減らすことができる」と主張した。さらに同氏は、セル設計を改善することは、市場導入前に安定化や調整が必要な新しい化学物質を採用するよりもリスクの低い“冒険”であると述べた。

 電池をリサイクルする能力も高めなくてはならない。この点についてBiton氏は「当社の化学物質に依存しないソリューションは、環境に優しい材料や規制に適応できるため、電池メーカーは、業界で深刻化している希少材料の使用を抑えた新しい化学物質を迅速に採用することができる」と述べた。

 Biton氏は「もう1つの利点は、われわれが電池寿命を延ばしているという事実だ。それにより廃棄物を減らすことができる。当社独自の製造プロセスは、既存のアプローチより環境に考慮したものといえる」と述べた。同社の3D電極は、室温で製造できるため、エネルギーコストや排出量の削減を実現できる。

【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】

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