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TECHNO-FRONTIER 2022/INDUSTRY-FRONTIER 2022 特集

高精度過電流検知に対応した「世界初」の2セル保護IC充放電制御FET調達も容易に(1/2 ページ)

エイブリックは2022年5月31日、外付け電流検出抵抗による高精度な過電流検出が可能な2セル直列用バッテリー保護ICを発表した。

» 2022年06月01日 09時30分 公開
[竹本達哉EE Times Japan]

2セルバッテリー搭載スマートフォンの要望で開発

 エイブリックは2022年5月31日、外付け電流検出抵抗による高精度な過電流検出が可能な2セル直列用バッテリー保護ICを発表した。同社では、「2セル直列用バッテリー保護ICとして、外付けの電流検出抵抗を用いた高精度な充電/放電過電流検出を実現した製品は世界初になる」としている。既に一部顧客向けに量産出荷を開始し、サンプル価格は200円(税別)

新製品の外観。HSNT-8パッケージ品(1.6×1.6×0.4mmサイズ) 出典:エイブリック

 バッテリー保護ICの主な機能の1つである過電流検出機能は、リチウムイオンバッテリー駆動機器の大電力化に伴いその重要性が増している。特にスマートフォンやノートPCなど大電流を流す機器では、バッテリーの発煙、発火、爆発などを防ぐために最大電流を規制する規格なども定められ、高精度の電流検出精度が求められている。

 高精度の電流検出を実現するには、外付けで電流検出専用の抵抗器を設ける方法が一般的だ。なお、高い検出精度が不要な場合は、充放電制御用FETのオン抵抗を利用して簡易的に電流を検出する方法がある。外付け抵抗が不要なため、省サイズ、低コストが実現しやすく、高精度の電流検出が求められないスマートフォンやノートPCなどの以外の用途では、充放電制御用FETのオン抵抗を利用した過電流検出機能を持つ保護ICの利用が一般的だ。

 そうした中で、2セルのバッテリーに向けた保護ICで高精度の電流検出を実現する外付け抵抗による過電流検出機能を備えた製品は「これまでなかった」(同社)とする。というのも高精度の過電流検出を求めるスマートフォンは1セル、また、ノートPCが使用するバッテリーは3〜5セルという具合で、2セルでは、過電流検出機能を求めるニーズがこれまで存在してなかったためだ。

 しかし「あるスマートフォンメーカーから『充電速度をさらに速めるため2セルバッテリーを採用するので、2セル用のバッテリー保護ICでも外付けの電流検出抵抗を用いた高精度な過電流検出を実現してほしい』との要望を受けた」(同社プロダクト・プロモーション ユニット 浜口正直氏)と、今回の新製品の開発に至ったという。「2セルの保護IC開発は(エイブリックにとって)11年振りで、開発経験者も少なくなっており難しい面が多くあったが、スピード感を持って開発にあたり“世界初”をうたって製品化することができた」(同社商品開発一ユニット 齋藤啓氏)

スマートフォン以外の2セル駆動機器にも利点を提供

 新製品は「S-82A2A」「S-82A2B」「S-82B2A」「S-82B2B」の4シリーズで、いずれも外付けの電流検出抵抗を用いた高精度過電流検出に対応。S-82A2A/同Bの2種は、充電/放電過電流検出電圧精度が±1.0mVと1セルバッテリー用保護ICと同等の高精度を誇り、スマートフォンなどの用途向け。S-82B2A/同Bの2種の充電/放電過電流検出電圧精度は±3.0mVで、デジタルカメラ、電動工具、無線機、クリーナー、ワイヤレススピーカーなど幅広い2セルバッテリー駆動の用途に向ける。

新製品の主な特長[クリックで拡大] 出典:エイブリック

 「充放電制御用FETのオン抵抗を利用する従来型の保護ICに比べ、新製品を使うことで、外付け抵抗2個が必要になるため、抵抗器2個分のコスト増になる。しかし、これまで過電流検出精度が低いために、少々の過電流が流れても壊れない定格電流に余裕のある充放電制御用FETを採用するなど、FETの選定に難しさが伴った。新製品であれば、過電流検出がより確実に行えるため、充放電制御用FETの選択が容易で、選択肢も広がる。半導体製品の調達で苦労することの多い昨今では、新製品を採用することで、抵抗器2個を追加するというデメリット以上に、大きなメリットを感じてもらえるだろう」(浜口氏)とし、スマートフォン以外の用途でも従来保護ICからの置き換えを狙う。

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