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ヘルニア歴8年の記者が「近距離モビリティ」を体験してみた”歩ける人”の移動手段にも(2/2 ページ)

» 2022年11月18日 15時00分 公開
[半田翔希EE Times Japan]
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乗り心地はいいが、やや値が張る

 試乗した平らな場所では大きな危険性を感じなかったが、車体が軽量のため段差や傾斜がある場所を走行する際は十分に減速し、転倒に気を付けて走行する必要があると感じた。担当者も「実際に走行する際にはゆっくり動き始めて、周囲の状況に合わせて加減速すること」を推奨している。

左=Model F/右=Model F 折り畳み状態[クリックで拡大]

 Model C2は、前方のタイヤにオムニホイール(その場で横回転できるタイヤ)を採用していて、最小回転半径76cmで小回りがきくとともに、側溝に挟まりにくいなど安定感があった。5時間充電した場合の走行距離は最大18km、段差の乗り越えは5.0cmとなっている。足元には容量20Lの籠が設置されているため荷物や買い物袋の収納が可能だ。また、総重量は約52kgと重めだが、3つに分解可能なため車の後部座席やトランクに収容できる。

 乗り心地は個人的に一番しっくりきたものの、やや値が張る。「Model S」が約22〜23万円、「Model F」が約27万円と他2種類が20万円台なのに対し、「Model C2」は約49万円となっている。また、Model FとModel C2は左右の肘置きの他につかまれる部分が無いため、利用には自分の身体をある程度自力で支えられる体幹が必要となる。

左=Model C2/右=Model C2 分解後[クリックで拡大]

 Model Sはスクータータイプのため、他の2種類とは異なり前方にハンドルが付いていて車体も前後に長いので安定感があった。移動や速度の変更などの操作は前方のハンドル部分で行える。充電満タン時の走行距離は最大33km、段差乗り越えは7.5cmとなっている。前方付属の籠には4.0kgまで荷物が収納可能で、近所の買い物には便利そうだ。

 一方で、車体が前後に長いため曲がる/下がる動作には一定の運転技術が必要だと感じた。法律的には問題ないとのことだが、視力や判断力の低下などの理由により普通自動車の運転が難しく、免許を返納せざるを得なかった方が使用するには少々不安があるというのが正直な感想だ。

左=Model S/右=Model S ハンドル部分[クリックで拡大]

 WHILLは取り外し可能なバッテリーが動力源で、家庭用のコンセントで簡単に充電できる。一方で、バッテリーはWHILLの下部に設置されており重量も約2.7kgあるため、足腰に不安を抱える方がしゃがんでバッテリーの充電/交換や機体のメンテナンスを行うとなると、コンディションによっては足腰に負担がかかりそうに思えた。

法律ではなく、モラルが課題

 WHILLは、いずれも道路交通法に定められた「電動車椅子」の規定により時速6kmを超える速度を出すことができない。また、ブレーキレバーはなくアクセルを離すと自然にブレーキがかかる仕組みになっている。

交通コメンテーターの西村直人氏[クリックで拡大]

近距離モビリティの利用について交通コメンテーターの西村直人氏は「法律上は歩道走行可能とはいえ、走行する際はあくまでも「乗り物」であることを認識し、利用者自身や歩行者など周囲の安全を確保した上で使用する必要がある」と述べた上で、近距離モビリティのあるべき姿として「製品を提供する上で『安心/安全』という言葉がよく使われるが、提供する側が主張するだけでなく利用者の周囲にいる人々に納得してもらうことが大切だ。WHILLが1台走っていても歩行に支障はないかもしれないが、2台、3台と増えた時に歩行者はどう思うか。これからは法律を守ることだけではなく、モラルを持って利用し周囲とコミュニケーションを取り合いながら、環境を作っていくことが大切だ」と主張した。

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