今度は、種類別半導体の四半期ごとの出荷個数を見てみよう(図7)。出荷額ほどではないが、やはり、Mos Memoryの低下が最もひどいように見える。また、Logicも、Mos Microもピークアウトしており、出荷額と同様に、成長しているのはAnalogだけであることが分かる。
2015年以降を拡大してみると、Mos Memoryは2021年Q3に、Mos Microは同年Q4に、Logicは2022年Q2にピークアウトしており、Analogだけが、階段状に成長していることが分かる(図8)。
ちまたでは、多くの半導体不足が解消され、過剰供給となっていることが報道されているが、車載半導体不足だけが解消されていないという。その不足している車載半導体とは、唯一成長を続けているAnalogだと思われる。このAnalogの中には、センサーやパワー半導体などが含まれる。これらが依然として不足し、クルマの減産が続いていると考えられる。
以下では、出荷額も出荷個数も急落しているMos Memoryの中のDRAMとNANDに焦点を当てることにする。
図9に、DRAMの四半期ごとの出荷額と出荷個数の推移を示す。筆者はこの図を見て考え込んでしまった。2022年Q3に出荷額が急降下しているのは理解できる。しかし、出荷個数までもがこれほど急落しているとは思わなかったからだ。
DRAMの出荷個数については、次のような歴史的経緯がある。まず、1991年から2003年頃までは緩やかに増大した。それが、2003年から2011年にかけて、出荷個数が急増した。これは、中国などBRICsと呼ばれた途上国が経済発展を遂げ、PC、携帯電話(後にスマートフォン)、各種電機製品に搭載するDRAMの需要が急拡大したことによる。
ところが、2011年から2018年にかけて、四半期のDRAMの出荷個数は、40億個前後で一定になった。これは、多数存在していたDRAMメーカーが淘汰されていき、2012年にエルピーダメモリが経営破綻して米Micron Technologyに買収されて以降、DRAMメーカーは実質的に、Samsung、SK hynx、Micronの3社に集約されたことによると考えている。筆者は、この3社が「暗黙の談合」のもと、生産調整を行い、それによってDRAMの出荷個数が横ばいになったと推測している。
しかし、2019年以降、DRAMの出荷個数は段階的に増大していき、約55億個に達した。この理由は次のように考えている。2014年頃までは、DRAMの主要な用途はPC用だった。2015年以降は、モバイル(つまりスマートフォン)用がDRAMの主役になった。そして、2022年以降は、モバイルに変わってサーバ用がDRAMの主戦場になると予測された(図10)。
実際、2022年11月2日のBusiness Koreaの“Server DRAMs Rise as Cash Cow for Samsung Electronics and SK Hynix”では、2022年にサーバ用が684.86億ギガビット、モバイル用が662.72億ギガビットとなり、サーバ用がモバイル用を超えたことを報道している。
このように、DRAMの主戦場がサーバ用に移行したことから、Samsung、SK hynix、Micronの3社が「暗黙の談合」を破棄し、サーバ用で覇権を取るべく競争を始めた。それ故、2019年以降、DRAMの出荷個数が増大したと考えていた。
その証拠として、図11に示すように、DRAMの出荷個数は、メモリ不況の時も、コロナ騒動の時も、それほど大きく減少しなかった。ところが、コロナ特需崩壊後の2022年Q2(53.35億個)からQ3(44.84億個)にかけて、一気に8.51億個も減少している。このことに筆者は驚いている。そして、これが故に、今回の半導体不況がリーマン・ショック級かそれ以上にひどいことになるかもしれないと思い始めたわけである。
では、もう一つのメモリのNANDはどうなっているだろうか?
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