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リーマン・ショック級のメモリ不況の到来 〜その陰にIntelの不調アリ湯之上隆のナノフォーカス(56)(4/5 ページ)

» 2022年11月21日 11時30分 公開

NANDの四半期ごとの出荷額と出荷個数

 図12に、NANDの四半期ごとの出荷額と出荷個数を示す。やはり、DRAMと同様に、出荷額も出荷個数も2022年Q2からQ3にかけて急降下している。ただし、DRAMと異なる点は、NANDの出荷個数が2021年Q3にピークアウトし、そこから既に大きく下がり始めていたことである。

図12:NANDの四半期毎の出荷額と出荷個数の推移(〜2022年Q3) 出所:WSTSのデータを基に筆者作成

 NANDの出荷個数に着目して、1991年Q1から2022年Q3までを概観してみよう。NANDの出荷個数は、2003年頃から2016年頃にかけて、ほぼ直線的に増出しいている。これは、不揮発性のメモリであるNANDが、デジタルカメラ、携帯電話(後にスマートフォン)、音楽プレーヤー「iPod」、PC用のSSD等、新たな市場を次々と開拓していったことによる。

 ところが、2016年以降、NANDの出荷個数の成長が約30億個で停滞する。これは、この頃からNANDが3次元化したことに原因があると考えている。2016年以前は、2次元の微細化を進めることによりメモリセルの集積度を上げるとともに、NANDのチップ面積が縮小し、1枚のウエハーからとれるNANDの個数が増出した。

 しかし2016年以降は、メモリセルの集積度を上げる方法が、2次元の微細化から3次元の積層に替わった。そのため、NANDの積層数は、48層、64層、96層(92層)、128層(112層)、176層(162層)と増大していったが、NANDのチップ面積はそれほど変わらなくなった。そのため、2016年以降は、NANDの出荷個数があまり増えなくなったと考えている。

 ここで、2015年Q1から2022年Q3を詳しく見てみると、NANDの出荷個数は、2016年Q2から2018年Q3にかけて、上下動しながら緩やかに増大し、メモリ不況の到来とともに大きく減少する(図13)。そのメモリ不況から回復していく途中にコロナ騒動があって、再び減少する。これらの減少の挙動は、DRAMよりも振れ幅が大きいように見える。

図13:NANDの四半期ごとの出荷額と出荷個数(2015年Q1〜2022年Q3) 出所:WSTSのデータを基に筆者作成

 そして、コロナ特需が終焉した2021年Q3に、NANDの出荷個数はピークアウトし、2022年Q2(30.18億個)からQ3(23.04億個)にかけて7.14億個も減少する。

 ここまで、DRAMとNANDについて、特に出荷個数に着目して、コロナ特需終焉後の挙動を分析した。2つのメモリとも、出荷額も出荷個数も、2022年Q2からQ3にかけて急降下している。それでは、DRAMとNANDの価格はどのように変化しているだろうか?

DRAMの大口取引価格

 図14に、各種のDRAMの大口取引(Contract)価格の推移を示す。DRAMeXchangeの大口取引価格データに2021年9月から掲載され始めたDDR4_16Gの価格は8.45米ドルから急降下し、2022年10月に4.55米ドルまで下がった。また、2021年12月から掲載され始めたDDR5_16Gの価格は、10.24米ドルから半額以下の5.06米ドルまで急降下した。

図14:DRAMの大口取引価格(2016〜2022年10月) 出所:DRAMeXchangeのデータを基に筆者作成

 なお、DDRはDouble-Data-Rateの略で、DDR4はDDR3より2倍転送速度が速く、最先端のDDR5はDDR4より2倍転送速度が速い。

 メモリバブルが崩壊したときも確かにひどかった。そのとき指標としていたDDR4_8G(1G×8)のContract価格は、2018年8月の8.19米ドルから2019年10月に2.81米ドルまで下がった。今回のコロナ特需の終焉(しゅうえん)におけるDRAM価格の下落は、メモリバブル崩壊の時より「マシ」かもしれないが、やはりひどいことに変わりはない。

NANDの価格

 図15Aに、筆者が入手可能な全てのNANDのContract価格を示す。NANDのContract価格では、なぜかSLC (Single-Level Cell)の32Gと16Gが、MLC(Multi Level Cell)の128G、64G、32Gよりも高くなっている。そのSLCは、メモリバブルの崩壊の時に、2017年11月の17.78米ドルから2019年5月に9.4米ドルまで下がった。今回のコロナ特需の終焉では、2022年5月の13.15米ドルから2022年10月の11.83米ドルまで下落した。これを見ると、コロナ特需終焉による下落は、メモリバブルの時ほど深刻でないように見える。しかし、現在のNANDの主流はSLCではない。

図15:NANDの大口取引価格(2016〜2022年10月) 出所:DRAMeXchangeのデータを基に筆者作成

 そこで、図15Bでは、Contract価格が高いSLC_32GとSLC_16Gを除外してみた。この中では、MLC_128GがNAND価格の指標として使われることが多い。そのMLC_128Gの価格は、メモリバブル崩壊の時には2018年5月の5.6米ドルから2019年6月の3.93米ドルに下落した。一方、コロナ特需終焉の際は、2022年5月の4.81米ドルから2022年10月の4.14米ドルに下落した。確かにContract価格が下がってはいるが、暴落というほどひどくはない。

 しかし、現在のNANDの主流は、MLC_128G ではなく、3D NANDのTLC(Triple Level Cell)である。ここで残念ながら、筆者がDRAMeXchangeと契約しているシルバー会員のランク(それでも年間30万円)では、3D NANDのTLCのContract価格を知ることができない。ただし、筆者のランクで、3D NANDのTLC(1テラビット)のSpot価格を知ることはできる。

 その3D NANDのTLC(1Tb)のSpot価格の推移を図16に示す。2022年6月23日に19.4米ドルだったSpot価格は、2022年9月13日に12.83米ドルまで一挙に暴落していることがわかった。恐らく、3D NANDのTLC(1Tb)のContract価格も、これと同じように暴落しているのではないだろうか?

図16:3D NANDのTLC(1Tb)のSpot価格 出所:DRAMeXchangeのデータを基に筆者作成

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